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小説1 (高校生狼男×高校生占い師) 完結

放課後、校門を出ようとした俺たちの前に、ばらばらと人が立ちふさがった。

「やあ、雅くん」
斎藤・敦<さいとう・あつし>と、そのとりまき6人。
俺の大嫌いな人間たちだ。

敦の父親は、この学校の理事の一人だと聞いている。(毎年、学院に多額の寄付をしているということだ)

帝都学院では、親の権力がそのまま生徒間の力関係になってくるので、敦の学院での影響力はトップクラスといってもいい。

そのせいなのか、いつも5〜6人の取り巻きたちに囲まれている。
それだけならば、俺も敦をここまで嫌ったりしない。

敦は、学院内で何をしても、親がもみ消してくれるとわかっている。

だから、自分より立場の弱いやつ(この場合、敦より家柄が悪いということらしい)をピックアップして、陰湿ないじめをするのだ。

しかも、自分の手は汚さずに、取り巻きたちに命じて、いじめをさせる。
俺は何よりそれが嫌いだ。

どうせやるなら、自分の手で、自分より強いものを標的にしたらどうだと思う。

肩幅に足を開き、両腕を下にたらして身構えた俺をよそに、雅はふんわりとほほ笑んだ。

「こんにちは、斎藤くん。何か用?」
「君が僕の父の依頼を受けてくれたから、挨拶だけしておこうかとおもってね」

「ああ、ジャパン・ワイナリーって、斎藤くんのお父さんの会社だったんだ。知らなくて、ごめんね」
雅の言葉に、敦が一瞬ではあるがひどく驚いた顔になった。

だいたい、雅は親の権力だの学院内の力関係だのには、まったく興味を示さないのだ。
一方の敦は、親の名前と権力でこれまで生きてきた人間だ。
学院内に、自分の親の名前と会社名を知らない生徒がいることが、驚きだったのだろう。

雅がにこにこしているものだから、敦も驚いた表情をひっこめてほほ笑む。
うそくさい微笑みに、虫酸が走る。

「良い結果をたのむよ、雅くん」
敦が雅の髪に手をのばした。

驚いたことに、俺がその手を払いのけるより早く、雅がすっと一歩後ろへ下がった。
普段のおっとりした物腰からは、考えられない素早さだ。

「僕の頭にさわってもいいのは、世界中で蓮ひとりだけだ」
いつもの優しい口調とはまったく違う声のトーンに、思わず雅の顔を見た。

頬をうっすらと上気させ、濡れたような大きな瞳で敦をにらみつけている。
雅は、怒っているのだ。

「読未示は未来を読むだけだよ。それが良いことでも悪いことでも、読未示にはどうにもできないんだ。良い結果なんて、頼まれてもこまる」

突き放したような雅の言いかたに、敦の顔色が変わった。

いけない。
敦の右手が制服のポケットに入ったのを見て、雅の腕をつかんで引き戻し、背中に庇う。

俺の鼻ははっきりと、奴のポケットの中にあるナイフのにおいをかぎわけていた。

(我慢も考えも足りない。始末におえないな)
そう思いながら、敦の目をまっすぐにみる。

「斎藤、ここは校門の前だ。お前がそのポケットに入っている物騒なものをふりまわせば、お前の父親でももみ消せないほどたくさんの目撃者が出る。やめておけ」

静かに言ってやると、敦は俺から視線を外して、ふいっと横を向いた。
奴の体からは、はっきりと怯えた臭いがする。

「そこをどいてくれ」
取り巻きたちも、敦にそっくりの怯えの臭いをさせながら、道をあけてくれた。
雅の手をひいて、奴らの真ん中を通り過ぎる。

ちょっと、いい気分だ。


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あきゅろす。
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