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小説1 (高校生狼男×高校生占い師) 完結

「みやちゃーん、お弁当、一緒にたべよー」
昼休み始まりのベルの音とともに、由羅が廊下のドアからひょっこり顔をのぞかせて、雅に声をかけてきた。

由羅の後ろに朱牙がみえる。

雅が俺を振り向いた。
「蓮、いい?」

「雅がそうしたいのなら、もちろんだ」
俺が頷くと、雅はうれしそうに笑う。
…かわいい。

「由羅くん、どこで食べるの?」
「お天気がいいから、中庭でたべようよ。気持ちいいよ」

由羅が言うとおり、南向きの中庭は、冬の間の絶好の弁当スポットだ。

天気さえよければ、陽の光がふり注いで、適度に体を暖めてくれるし、校舎が冷たい風をさえぎってくれる。

中庭に出た俺たちは、太陽で程よく温まった芝生の上に腰をおろした。

「みやちゃん、今日の放課後、ヒマ?」
「んー、今日はダメ。仕事があるんだ」

「え、みやちゃんのお父さん、また具合が悪いの?」
「尚<なお>さんは絶好調だよ。今日の仕事は、どうしても僕に未来を読んでって頼まれて、断り切れなかったから」

雅は自分が読未示の家系に生まれて、読未示として育ったことを誰にも隠していない。

もっとも、隠していたとしても、この学校にいる生徒の
親の大半が、一度は日下部の読未示に世話になっているから、ばれるのは時間の問題だったろう。

生徒たちは日下部の読未示の力がどれほどのものか、小さいころから教えられている。

だから、雅に遊び半分やからかいで、
「未来を読んでくれ」
などと言うやつは一人もいない。

『気を付けてください』
突然、俺の隣に座っていた朱牙が、雅には聞こえない犬笛の音で話しかけてきた。

朱牙が何者なのか、俺は知らない。
また、朱牙も俺が狼男であることを知らないはずだ。

それなのにこいつは、幼稚園で初めて会ったその日に、犬笛の音で話しかけてきたのだ。

だいたい、犬笛の音を喉から出すことじたい、普通の人間にできることじゃない。

得体の知れないやつだが、俺の鼻がこいつの敵意を嗅ぎとったことはないので、いまだに正体を問い詰めることはしていない。

『何に気を付けろと?』
俺も同じ音で問う。

『今日の雅の仕事です。相手はジャパン・ワイナリーのトップでしょう?』
『それは言えない』

『守秘義務ってやつですか。でも、ジャパン・ワイナリーのトップは、雅を引っぱり出すことに成功したと、あちこちで言いふらしていますよ』
『そうか』

『私が思うに、未来を読むというより、美少年と噂されている雅が見たかっただけかと』
『ああ』

『ええ、ですから、気を付けてください。雅を見れば、きっとどうにかして手に入れようとするはずです。あいつは、欲しいものを手に入れるためには、手段を選びません』

『わかった、ありがとう』
『いいえ、この前、由羅を助けてくれたことに比べたら、ささいなことです』

朱牙は、2日前の下校途中に、居眠り運転のトラックが俺たちめがけて突っ込んできたことを言っているのだろう。

俺は別に由羅を助けたわけではなくて、雅が由羅と一緒にいたので、手を出してトラックをひっくり返しただけだ。

あのスピードで繰り出した俺の手が見えたとすると、ますます朱牙が得体の知れないやつに思えてくる。


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