小説1 (高校生狼男×高校生占い師) 完結
6
本物の狼男、狼女は、月の光を浴びて変身したりしない。
もちろん、狼に変わることはできる。
だがそれは、自分でそうしようと思った時だけで、月光を浴びたからといって、自動的に変身するわけじゃない。
映画のように、人だか狼だかわからないような中途半端な変身もしない。
俺のことを言わせてもらえば、完璧な灰色狼になることができる。
それから、人を襲ったりもしない。
もちろん、やられればやり返すが、俺たちはたいてい平和主義者だ。
これもまた、映画のように生肉に齧り付いたりもしない。
狼男にもよるのかもしれないが、俺は生肉よりも中までしっかり火の通った、ウエルダンのステーキのほうが好きだ。
鼻も耳も人よりずっといい。
比べたことはないが、俺の嗅覚や聴覚は犬よりも鋭いのではないかとおもう。
目は暗闇の中でもはっきりと見える。
狼男だから、体長は月の満ち欠けに大きく影響される。
俺が絶好調でいられるのは、上弦の半月から下弦の半月くらいまでの間だ。
この時の俺は、重さ180sのバーベルを左手の小指一本でぶらさげて、コントロールをつけて100m先まで投げられる。
厚さ10cm程度の金属なら、人差指でつついて穴を開けられるし、雅を抱えていても100mを3秒台で走ることができる。
たとえナイフで刺されても、五分くらいで傷は消え、痛みもない。
不調になるのは、27日月から新月をはさんで三日月までの約一週間の間だ。
この時の俺には、調子のいい時の半分以下の身体能力しかない。
180sのバーベルは、両手を使ってやっと持ち上がるし、厚さ10cmの金属は少しへこめばいいほうで、雅を抱いて走っても、100m10秒台がやっとだ。
ナイフで刺されれば痛みもあるし、傷が癒えるのに丸一日はかかる。
以上、正しい狼男を理解してもらえただろうか。
もちろん、俺の正体は、雅と限られた日下部の人間しか知らない。
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