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小説1 (高校生狼男×高校生占い師) 完結
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思わずため息が出てしまった。

この廊下を曲がって、階段を1フロア分降りたら、2年生の教室だ。

「うわっ!?」

俺の3歩先を歩いていた雅の体が、階段の最上段でぐらりと傾いた。

手を伸ばそうとしたが、ちょうど雅の後ろに立つような形になっている麗華が邪魔だ。

考えるより先に体が動いた。

麗華のわきをすり抜け、ダイブする。

捕まえた。

雅を抱えこんで体をひねり、背中から階段の半ばに落ちる。

俺一人なら転がって衝撃を和らげることもできるが、今は雅を抱えている。

絶対に転がることはできない。

そのまま下まで背中で滑り落ちた。

月齢12・6。

ほぼ満月に近いので、身体は絶好調だ。
衝撃による痛みは、まったく無い。

「蓮っ!」

大丈夫かと聞くより早く、雅が飛び起きた。

学校で雅を腕の中に入れておけることはほとんどないので、もう少し抱いていたかったと思いながら、ゆっくり体を起こす。

「蓮、蓮。…ごめんなさい」

小さな手が俺の背中を撫でさする。

大粒の涙が床に落ちて、ぽたぽたと音をたてた。

「どこか痛くしたのか?」

ハンカチを持っていないので、指で雅の涙を拭う。

「ちがっ…うっ…蓮が、っ僕がうっかり転んだりしたからっ、蓮っ、け、怪我っ」

誰も見ていなければ、抱きしめてキスするところだ。
雅にはかわいそうだが、俺のことで雅が泣いているのは、
すごく嬉しい。

「俺は何でもないぞ」
「うそっ…すっ、すごい音…したっ」

「ああ、音は派手だったかもしれないが…、今、月齢がいくつだか知っているか?」

「じゅっ…12・6」
泣きながらでも、すらっと答えるあたりは、さすが雅だ。

「だったら、俺が何でもないのは、わかるだろう?」

「ごめんなさい…蓮、ごめっ、なさい」

雅には俺の言葉が、ただ雅を慰めるための嘘にきこえているようだ。

雅は生身の人間だ。

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