小説1 (高校生狼男×高校生占い師) 完結
2
言い遅れたが、俺は山神・蓮<やまがみ・れん>18歳、正真正銘、本物の狼男だ。
そして、俺の腕の中にいる小さくてかわいいやつは、日下部・雅<くさかべ・みやび>読未示<よみし>。
読未示とは何かというと、読んで字のごとく、未来を読んで示すもののことだ。
平たく言えば、外れのない占い師、または預言者といったところか。
なぜ高校生の読未示と、同じく高校生の狼男が一緒にいるのかというと、古いしきたり、家の決まりみたいなものがあるからだ。
雅の生家、日下部家は、遠く卑弥呼の時代の前から、民を導いてきた読未示の家系だ。
三千年の長きにわたり、つぎつぎと読未示を生み出し、民だけでなく、世界中の政治や経済を動かす者たちから依頼を受けて、未来を読んできた。
そういった実力者たちの依頼を受けるということは、危険を背負うことにもつながる。
せっかく未来を読んでやったのに、依頼人から“世の中の裏側を知りすぎた”と、刺客を差し向けられてしまうのだ。
読未示は、他人の未来は読めても、自分の未来はまったく読めないから、危険にさらされていることすら気づかないことが多い。
それでは、命がいくつあっても足りない。
そこで、いつのころからか日下部の家は、次の当主となる未来を読む才能を持ったものが出てくると、同じ年に山神家に生まれた男(由緒正しい狼男ということだ)を、ボディガードとして迎え入れるようになったのだ。
そうなったのは、気の遠くなるような昔のことだと聞いている。
駅の目立たない場所で雅を腕から降ろし、時計を見てほっとした。
いつもの時間より5分早い。
「間に合ったね」
雅が俺を見上げて、にこっと笑った。
遅刻しそうになったのは誰のせいだ、と思うが、この笑顔にやられてしまう。
かわいらしいこと、この上ない。
「よかったな」
思わず柔らかい髪を撫でる。
本当にこいつは、髪の先までかわいらしい。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!