小説1 (高校生狼男×高校生占い師) 完結
16
だから、眠れなくなるのだ。
去年の夏、尚さんの代理をしていた時には、ほとんど毎晩、俺のベッドで寝ていた。
人より少し体温の高い俺の体は、絶好の安眠枕らしい。
いつも、すがりつくようにぴったりと寄り添ってきて、あっという間に眠りについてしまう。
反対に俺は眠れなくなる。
俺にとっての雅は、いつのころからか恋愛の対象だ。
ぴったりと体をくっつけられて、眠れるはずがない。
空いている右手で、そっと雅の髪をなでる。
いつまでこんなことが続くのだろう。
いっそのこと、雅が早く結婚して、ほかの誰かのものになってしまえば、俺もきっぱりあきらめがついて落ち着くのではないだろうか。
そう考えたすぐ後に、それを否定する。
雅がほかの誰かのものになれば、俺は嫉妬で狂ってしまうだろう。
そうしたら、雅のそばにはいられない。
それよりは、いまのままのほうがいいのかもしれない。
月の光に、雅のきれいな寝顔が照らされる。
指でゆっくり頬をなぞる。
よく眠っている。
今なら…。
柔らかい小さな唇に、唇をあてた。
下半身がズキリと脈打って、はっとした。
だめだ、いけない。
自分を戒めるために、雅から体を離そうとして、思わずため息をついた。
雅の右手が、しっかりと俺のTシャツの胸元を握りしめている。
今夜はこのまま、眠れぬ夜を過ごすことになりそうだ。
〜〜〜〜〜〜〜
「日下部くん!雅くん!」
中庭でのんびり弁当を食べていた俺たちのところへ、斎藤・敦が走り寄ってきた。
俺は思わず顔をしかめる。
敦も、敦の父親も気に食わない。
目の前では、朱牙が由羅の腕をつかんで引き寄せている。
どうやら、敦が由羅にちょっかいを出したという噂は、本当らしい。
「どうしたの、斎藤くん」
雅は相変わらずのんびりとした微笑を浮かべ、敦を見上げた。
「この間は失礼なことを言って、すまなかったね。あの会社は、ほかにも複数の会社に合併を持ちかけていてね、合併に乗り気だったすべての会社を巻き込んで倒産したよ。手を引いた父は救われた。ありがとう、君のおかげだ」
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