小説1 (高校生狼男×高校生占い師) 完結
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一応、斎藤は客であるので、そのまま黙って頭を下げる。
いくら失礼な奴でも、ここまですれば分かったのだろう。
斎藤はふらふらと部屋を出ていった。
ドアを閉め、ふり返る。
雅は小さな鏡をていねいに布に包んでいる。
その顔はもう、いつものあどけない無邪気なものに戻っていた。
「疲れたか?」
「平気だよ。あ、でも、帰りは車がいいな」
その夜遅く、俺は自室の灯りをすべて消して、月光浴を楽しんでいた。
狼男の健康維持には欠かせないことだ。
月齢は7.6
右側が丸くふくらんだ半月(上弦の月)で、これから満月にむかっていくところだ。
隣の雅の部屋からは、眠れずに何度も寝返りをうつ音が聞こえる。
やがて、あきらめたようにベッドから起き上がる気配がして、俺と雅の部屋をつなぐドアが小さくノックされた。
「どうぞ」
声をかけると、そっとドアが開く。
夜目の利く俺には、雅のかわいらしいパジャマ姿がはっきり見えるが、雅にはぼんやりと俺のシルエットが見えているだけだろう。
「あの、夜遅くにごめんね…」
「どうした?」
ドアのところで何か言いたそうにもじもじしている姿がかわいくて、雅の言いたいことは予測がつくのに、わざと聞く。
「一緒に…、寝てもいい?」
やっぱりそうだ。
体をベッドの端に寄せ、毛布を持ち上げる。
「冷えるぞ、早く来い」
「うんっ」
嬉しそうにベッドにもぐり込んできた雅は、しばらくごそごそと頭を落ち着ける場所をさがす。
「ほら」
と、左腕を出すと、にこっと笑って子狼のようにすり寄ってくる。
そして、俺の腕に頭を落ち着け、深呼吸を1回、2回。
あとはもう夢の中だ。
未来を読んだ後の雅は、決まって眠れなくなる。
未来を読むということは、極度の緊張状態に自分を置くことだと、尚さんが言っていた。
おそらく雅は、その緊張をうまくほぐすことができないのだろう。
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