小説1 (高校生狼男×高校生占い師) 完結
14
「残念ながら、それはお止めになったほうがいい。相手方の企業は持ちこたえてもあとひと月。傘下に収めれば、共倒れになるでしょう」
「なっ…!」
「ああ、もうすでに相当なお金を相手方に渡しているのですね」
雅は鏡をのぞき込んで、かわいらしく首をかしげた。
「相手方が海外の企業ということもあったのでしょうが…。書類のねつ造があったようですね。斎藤さんは騙されてしまったのでしょう」
「ちょっと待て!いや、待ってください、先生!」
「日下部とお呼びください。僕は先生ではありません」
「く、日下部さん!すでに30億の金がむこうに渡っています。いまさら、契約をなかったことにしても、金は戻ってこない…」
ざまあみろ。
斎藤は体を震わせ、青くなっている。
朱牙の言ったとおり、斎藤は未来を読むことを口実に、雅が見たかっただけなのだろう。
悪い結果が出るなんて、思ってもいなかったに違いない。
本気で合併の吉凶を読んでもらう気があるのなら、金を動かす前にここに来るはずだ。
「教えてください。私は、いったいどうすれば…」
「さあ、それはご自分で決めること。斎藤さんは僕に会ったことで、二通りの未来を手に入れました。企業合併をした後のあなたと、それをしなかった後のあなた。どちらを選ぶかは、斎藤さん次第です」
雅の指が鏡のふちをなぞりはじめた。
そろそろ、未来を読む時間は終わりだ。
「き、君に未来を読んでもらうために、大金を支払った。その十倍の金を出そう。何とかならないのかね?」
「何とか、とは、未来を変えるということですか?」
雅は大きく息を吸い込んで、ふう、と吐き出した。
怒鳴りたいのを堪えているようなため息だ。
「僕は読未示です。それ以上でも、以下でもない。読未示は未来を読むだけです。変えることはできません」
「君が間違えているという可能性は?」
「ありません」
雅はほほ笑みながら、きっぱりと首を横にふった。
もういいだろう。
これ以上雅にたいして失礼なことを言わせておいたら、殴ってしまいそうだ。
俺は歩いて行って、ドアを大きく開け放った。
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