作品2-2
:柚原和樹 2/14 17:57
【初めまして、参加します。】
「――ッ」
鬼太郎は言葉を失い、目の前の、自分にそっくりな3人を見つめた。
「やぁ」
「初めまして」
「やっと来たね」
三者三様に微笑む彼らに、鬼太郎は我に返り、やっと口を開く。
「――アナタ達は、ナニ?」
身体を強張らせ、いつでも飛び掛かれるように、足を引く――だが、鬼太郎は心の片隅で、そんなことは必要ないと感じていた。
そんな鬼太郎を、3人はきょとんと見返す。
広場に集まっていた妖怪達は、遠巻きに静かに見守っていた。
「――嗚呼、やっぱりそう云う反応だよね」
「よーし、やるなら相手になるぜ」
「……やめなよ、戸田君。話がややこしくなるから」
ちゃんちゃんこの色が唯一違う少年が、楽しげに腕捲りをする仕草をみせると、一番落ち着きのある少年が、溜め息混じりにたしなめる。
「ごめんね。僕達は君と争いに来たわけじゃないんだ」
そう、一番幼い感じの残る少年が、人懐っこい笑みを浮かべ。
「――僕達は鬼太郎」
と言った。
「……鬼太郎がそんなに居るとは聞いたことありません」
鬼太郎はいぶかしげに彼らを見つめる。
「確かに、鬼太郎は1人さ。僕らは此処の世界の住人じゃないからね」
「どういう……?」
「一つの様で、一つじゃない。繋がっている様で、繋がっていない――少しずつ異なる、それぞれの僕達の世界があって、そこでの僕は鬼太郎なんだ」
落ち着きのある少年の言葉に、鬼太郎は首を傾げる一方だ。
「……わかるようなわからないような」
「まぁ、要するに、君は僕で、僕は君ってことさ」
「はぁ……」
――何だか頭が痛くなりそうです……。
「でも、みんな鬼太郎だけど、鬼太郎って呼んだら区別がつかないから、僕達の間での名前で呼びあおうよ」
一番幼い感じの残る少年が笑って言うと、ちゃんちゃんこの色の違う少年が声をあげた。
「彼が一番年上の野沢君。二番目が僕、戸田。そして、松岡君」
「宜しく」
「そして、君は高山君と呼ばせてもらうよ」
「……わかりました」
――それにしても、一番幼い感じのする彼が一番年上なんてびっくりだ。
「それにしても此処は賑やかだね」
野沢は珍しそうに辺りを見渡す。
「僕らの世界であるのは、おばばのアパートだけだしな」
戸田は松岡にいうと、松岡は頷く。
「――あの、それで、あなた方が、ここに来た目的は何なんですか? まさか、単なる異次元観光というのなら、今、僕はそれどころじゃないので」
――そう、早く父さんを助けないと!
「違うよ、確かに君には会って見たいという思いがあったけど」
「――僕らは君に呼ばれたのさ」
野沢と戸田の言葉に、鬼太郎は首を傾げる。
「僕に?」
「そう、違うかい?」
「覚えがないです。第一、僕はあなた方の事を知らなかったのに……」
「まぁ、それはおいとくとして。何か困ったことが起こったんじゃないのか?」
――確かに今はそんな小さなことにかまっている余裕がない。
今は一刻も早く行動を起こさなければならないのだ。
だから、手伝ってもらえるなら、1人でも多い方がいい――
「父さんが、ぬらりひょんに連れ去られたんだ!」
:桜坂いずみ 2/20 23:21
【初めまして。よろしくお願いします。】
「なんだって…!?」
高山の言葉を聞いた野沢、戸田、松岡の三人は声をあげた。その叫びは妖怪横丁一帯に響き、あまりの声の大きさ故にその場を逆に静寂へと招いた。
「…それを先に言えよ!」
妖怪たちの真ん中で静寂を破ったのは戸田。眉を吊り上げながら声を荒げて高山に詰め寄る。高山は、君たちが急に現れてややこしい話をするからだよ!と、それはそれでもっともらしい理由を述べたが、戸田がそれで納得するはずが無く、ついには高山の胸ぐらを掴んで来た。
そこで見るに見かねた野沢が宥めるように割って入る。
「まぁまぁ戸田くん、一大事だ。喧嘩は後にして今は僕の父さんを助けに…」
「いや野沢くん、僕の、父さんを早く助けに行こうよ。」
今度は野沢が言ったところで松岡がそれを遮る。松岡の言葉に何か燃えるものを感じた野沢は、負けじと言い返す姿勢に出た。
「…いやいや、松岡くん。僕の、父さんを助けに行くんだよね?」
「いやいやいや、野沢くん。僕の、父さんだけど何か?」
「いやいやいやいや、松岡くん。」
「いやいやいやいや、野沢くん。」
先程までは戸田と高山が言い合っていたはずだが、今は野沢と松岡が冷静なる争いを始めている。
それに気付いた高山は慌てて戸田の手を振り切り、二人に訴えるように叫んだ。
「の…野沢くん!松岡くん!ここでは僕の父さん……じゃなくて、僕たちの父さんでしょ!?早く助けに行こう!」
その言葉に野沢と松岡はハッとし、言い争いをやめた。
「で、父さんはどこでさらわれたんだ!?」
戸田が高山に尋ねる。すると高山は先程走って来た方向を指差し、睨んで言った。
「墓場温泉だ…!」
そして四人の鬼太郎は下駄の音を荒げながら広場をあとにした。
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