十五秒越しの殺意(和麻)完
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何も気配を感じさせず、突然あいつは俺の前に現れた。
最初、何が起こったのか分からなかった、否、分かろうとしなかった。俺はあいつを見つめた。時間にしてみればたった3秒ほどだろうが、もっと長く見ていたように思える。その時俺は相当間抜けな顔をしていたに違いない。すると、あいつは馬鹿にするように俺の周りを行ったり来たりし始めた。
悪口こそ言わないがその目障りな姿といい行動といい、次第にふつふつと怒りが湧き出るのを感じた。怒りで戦慄く俺をよそにあいつは離れていった。
ご丁寧なことに床においていた俺の鞄を踏みつけて。
何かがブツリと切れた。
俺は考えるよりも早く手元にあった鋏を逆手に握る。あいつがたじろぐのが見えた。構うものか、そのまま俺は腕を振りかざした。
急所を外しはしなかった。鋏を介して手に鈍い感触が伝わる。
あいつは最期にピクリと動いたきり、絶命した。
たった15秒の出来事だった。
暫くして一気に恐怖が襲ってきた。慌てて鋏を握りしめていた手を振り払うように離した。
(取り返しのつかないことをしてしまった。鋏ですることなんかなかったのに……!)
これ以上この場にいたくなかった。乱れる息を整える間もなく鞄を掴み、俺は教室から転げるように出て行った。
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