リレー小説第弐
5
「上手くやってくれているようだな」
ギルバート・フィリップスは階下の騒ぎを耳にし、静かな笑みを浮かべた。今頃はローランドも裏で手を回している事だろう。これなら、もうこの研究施設に用はない。彼が肩甲骨をコキコキと鳴らすと、着ているスーツの裂け目から黒い翼が広がった。
「ひとまずニュープラハへ向かうか。待て、地下のネズミどもの処理は……ローランド一人でも問題ないか」
ギルバート・フィリップスは窓を突き破り、漆黒の空へと消えた。
「何、上陸隊が全滅しただと!?」
「有線通信、途絶えました。やはり噂は本物です」
巡洋艦の艦橋にどよめきが広がった。もしそのような化け物が実在するとすれば、我々には手の出しようが無いじゃないか。艦長は出撃の際にカギハラ提督がかけた言葉を思い出した。『くれぐれも偵察行だぞ』、と……
「どうします? このまま撤退しますか」
「やむを得ん。このまま離脱、海に出るぞ」
船体が軋み、再び水中へと消えた。エンジンを起動しようとしたその時、艦を衝撃波が襲った。
「どうした!?」
「船体上部に亀裂発生! 第二甲板まで浸水します」
再び衝撃波。今度のは致命的で、テメレア級巡洋艦はまっ二つに裂けてしまった。艦橋は大きくひしゃげ、巡洋艦の艦長は曇りゆく視界の中に一本の足を見た。
「あ……足……」
南部独立同盟の巡洋艦“リュースバルク”号は大規模収束下水道管の中で、ローランド・スミスのかかと落としによって撃沈した。
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