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リレー小説第弐
13

 「ゼノビア・ジェラルディーンなのか?」
 彼女は電話に出たきり一言も発することなく相手の男の声を聞いていた。もうこうしはじめてから十分以上が経っているだろう……しかし、彼女には男の声に返事をするつもりも電話を切るつもりもなかった。
 「答えろ。お前はゼノビア・ジェラルディーンか?」
 イヤホンは右耳に挿したままで、ゼノビアはマイクの電源だけを切った。返事をしてはならない理由も自分がゼノビアであることを隠さなければならない理由も全くないのだが、相手に名乗るつもりがない以上は自分にも答える必要はない。
 この数週間、相棒のアルの姿を見ていない。
 突然呼び出されて一人で任務に向かわされたのかとも考えたが、パートナーである彼が自分に何も告げずに一人でそうするとは考えにくい。そもそも任務中の行動は二人一組が原則のはずである。彼と全く連絡がつかないことを考えると、アルの身に危険があって動くことができないでいるのか、或いは……ゼノビアは彼の無事を願った。
 彼女は、自分が緊張していることにも、自分が周囲に向けている警戒が必要以上のものであることにも、またかつてなく苛立っていることにも、自分を冷静に見て気付いていた。
 電話の相手は諦めることなく返事のない質問を繰り返し続けた。
 その男がどこに所属する人間なのかを確信して、彼女はそのまま施設へと静かに歩き始めた。



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あきゅろす。
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