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リレー小説第弐
11
 今まさにウェーブ発信者に連絡を取ろうとした瞬間、大出力のJウェーブが貧相な山岳基地を襲った。
「何事だ!?」
「発信源、近いです!……レーダー室からです!?」
「何とか間に合ったか。おいカギハラ、余計な事をしてもらっては困る」
司令室の扉が開き、灰色の制帽をかぶった男が姿を現した。カギハラは向き直って敬礼する。
「ティルピッツ将軍。お着きになられましたか」
「先ほどジェットトラックで良くない話を耳にした。マスコミを使うつもりだって?」
「はい。最善の手段と思いました」
「連中ほど信用のならん人間はいない。ウェーブ発信社に情報をばらすくらいだったらニュープラハ議会に情報を売った方がましだ。正直に言って君には失望したよ。もし南部の民衆がいったん暴走してしまったら、収拾がつけられなくなる」
「逆に、それを利用すれば良いのではないでしょうか? これを機に一気に北部を急襲すれば、必ずや勝利を掴む事が出来ます」
「いかん。それではいかんのだ。判ってはくれぬのかね?」
カギハラは敬礼で答えを返した。将軍は一通り兵士をたしなめた上で、司令室を後にした。その足音が聞こえなくなったところで、通信兵がカギハラに耳打ちした。
「どう思います?」
「何がだ」
「上層部の動きです。おかしいとは思いませんか? まるで開戦を恐れているかのような」
全くだった。時には、上層部は南部の勝利を望んでいないのではと思う事もあった。カギハラは椅子にゆっくりと腰掛けた。兵たちは立ち上がり、カギハラを見る。
「我々の意志は一つ、南部同盟の独立です。カギハラ提督、ご決断を」
「ふむ……」
瞼を閉じ、指を波打たせる。
「やってみるか」


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