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Slaughter Game(外村駒也)
ページ:3
「怪我はないっすか、タツヤさん」
「ふざけろ。マメ喰らう訳ねえだろ。俺を虚仮にしてんのか」
「いや、そういう訳じゃないっす」
 マキオはびくびくしながら頭を深く下げて、本間に謝った。暴走族では幹部とヒラであるから、この上下関係は至極当然のことである。
「でも、誰が撃って来たんすかね」
「俺らと同じように、このゲームにガチになってる奴らがいるってことだ。これで躊躇わずにこれが撃てるぜ」
 本間はそう言うと、懐から銀色に光る拳銃を取り出し、頬を弛めた。その拳銃は、Springfield XD(スプリングフィールドXD)と呼ばれるクロアチア製のものである。シングルアクションであるが、9mmパラベラム弾、.357SIG、.40S&W、.45GAPなど、多くの弾丸用に色々な口径のものが製造されている。
 本間が手にしているのは、.45ACPが13発装填できるものだった。
「この弾丸はな、マキオ、あのコルトガバメントにも使われる強力な弾丸だ。それが13発。コルトでさえ7発しか装填できないんだから、こいつは強え」
 と、本間は誇らしげに言った。
(俺のトカレフより凄えな。何でXDは俺のじゃなかったんだよ。……一回でいいから使ってみてえ)
 本間の発言を聞いて、マキオは心の中で、そう思った。
「……どうしたんすか、タツヤさん」
 不意に本間が立ち止まり、考え事をしているようだったので、マキオは恐る恐る声をかけた。
「ははっ。いいこと思い付いたぜ」
 本間はそう言うと、今まで逃げてきた道を引き返し始めた。
「ちょっ、何で戻るんすか。そんなことしたら、また撃たれかねないっすよ」
 マキオの心配をよそに、本間はただひたすら廊下を歩いている。
 しばらくして、2人は狙撃された地点に戻ってきた。壁には3発分の銃痕が残っている。
「……ここでいいだろう」
「何がいいんすか、タツヤさん。今度こそ死にますよ。見て下さいよ、このマメの痕。ほとんど横一線に並んでいますよ。かなりの腕の奴ですよ」
「うっせえな、マキオ。てめえ黙ってろよ」
「……でも」
「ん。黙れ、っつってんだろ」
「ぐふっ」
 本間に腹部へ膝蹴りを入れられ、マキオは床に倒れこんだ。
「そんなに文句があるんだったら、俺を撃ってみろよ。お前だってチャカ持ってんだろ。あ、トカレフだったけか。それで撃ってみろよ」
「……すみません、タツヤさん」
 マキオは腹を押さえながらも、痛みを堪えて本間に謝った。
「それでいいんだよ、お前は俺の言うこと聞いてりゃよ。はははっ」
 本間の笑いには、陰険な含みがあった。
「それでよ、マキオぅ。お前、今から少し、その場にそうしてろ。俺は物陰にいるからよ」
「……どういうことっすか」
「てめえはただ聞いてりゃいいんだよ。ドタマかち割んぞ、こら」
 本間はまた、膝でマキオをあしらった。
「てめえはよぅ、手早く言えば、囮だ。おめえが廊下に一人でいたら、さっきの奴らもじきに気付くだろ。そこを俺が撃ち殺してやる。大丈夫だろ」
「無理っすよ、俺には。危険過ぎるっす」
「何だよ、おめえ命でも惜しいだと。んなもん、捨てたって大したこたぁねえよ。なんだったら、俺が撃ち殺してやろうか。役にも立たねえなら、足手まといだからな。はははっ」
 本間は懐からXDを取り出すと、マキオの額に銃口を突きつけた。
「……まさか、撃ったりなんかしないっすよね、タツヤさん。俺、十分タツヤさんを慕って」
 パン。本間のXDが火を噴いた。
「っ、ぐぁっ」
 マキオの右足の脛辺りが、赤く染まった。
「そういう思い込みがうぜえんだよ。お前は俺の言うことを聞いてりゃいい。慕おうがどうしようがてめえの勝手なんだよ。俺は知らねえ」
「……っ、俺を撃つ理由が解らねえっす」
「ははっ。お前が馬鹿なだけなんだよ。俺も敵だぜ。一緒にいれば壁か囮になると思ってたが、そうはいかねえみたいだな。今度は頭だぜ」
 本間は再び銃口をマキオに向ける。
「そこで死んでろ」
 本間が引き金に指をかける。
「……死にたくねえ。俺はまだ……い、いやだぁぁぁ」
 パパン。2発の銃声が、轟いた。


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あきゅろす。
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