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Slaughter Game(外村駒也)
ページ:5
 パパン。2発の銃声が響いた。この音は、誰かの空耳でもなく、本間の耳にもはっきりと聞こえた。
 だが、本間は訝しげに眉間に皺を寄せた。
(そんな馬鹿な。俺はまだ発砲してないぞ)
 もっとも、この思考が、本間の脳内で完全に為された筈はない。
 次の瞬間、否、ほとんど同時と言っていいほどに、本間は異変に気が付いた。目の前に、床が近付いて来たのだった。
(……SFじゃねえんだ。俺は確かに立って……)
 程なくして、彼の身体に床が叩きつけられた。少なくとも、本間にはそう感じられたのである。ボクサーが顎に一撃を喰らってダウンするのと、同じ感覚に近かった。
 本間は、立ち上がろうと身体に力を入れたが、なぜかどこも動かなかった。同時に意識が徐々に薄れていく。目の前の景色がぼやけ始めていた。
(俺ぁ撃たれたのか)
 と、本間は思った。だとしたら、一体誰に……。
「……おい、マキオぅ……て、てめえが撃ったのかぁ」
 本間は辛うじて声を絞り出したが、返事が無い。
「……お、俺ぁまだ、し、し、死にたくぁねえ。俺が、く、くたばる筈ぁ、ねえんだよ。な、なぁ、そうだろぉ、マキオぅ」
 本間の前に手が伸びてきて、彼のXDを取り上げた。
「マ、マキオぅ。さ、さっきは悪かったなぁ。足は、大丈夫かぁ。もう、う、撃ったりゃしねぇからよぅ。た、助けてくれや。わ、わ、悪気ぁねぇんだからよぅ、な、な、マキオぅ」
 やはり返事は無い。代わりに、別の方角から、床を伝わって足音が聞こえた。
「マキオぅ、ちと、寒くぁねえか。そ、そ、それとよぉ、この赤い水、ヌメっとしててよぅ、キモいから、ふ、拭いてくれねえかぁ。おぅ、マキオぅ、寒いなぁ。……おめえは、大丈夫かぁ。判ぁってる、おめえはよぅ、初めて、お、俺んとこぁ来たときから、無理しすぎだぁ。なぁ、寒ぃからよぅ……俺ぁ、ま、まだ……ほら、て、手が砂だぜぇ。溶けてくんよ、ははっ。お、俺ぁ、ね、寝るからよぅ、……起こす…じゃねえぞ…………」


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