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死なない鳥(緋京)完

もううんざりだ。どいつもこいつも自分勝手過ぎる。こんなところ出ていってやる。
決意を固めた少年は一人準備し始めた。草木も眠るこの時間、酒の入った大人たちが起きるはずもない。邪魔されずに準備を終わらすことができた。あとは資金を調達するだけ。あれだけ働いてきたのだ。俺には貰う権利があるだろう。そっと金庫からいくらか頂いたあと街へ出るための唯一の道へ向かった。
「ここを出るのか、アーロン」
アーロンと呼ばれた少年はその声にびくりとしながら振り返った。
「カイ…なんでお前がここに」
「お前があの後何か決意したように見えたからな」
「お前も見てたんだからわかるだろ。あいつら俺のことを売りやがったんだ。ただ単にあの貴族たちに気に入られるための貢ぎ物として。俺は家族の中で一人だけ血が繋がっていない。だからこき使われても我慢してきたのに。」
「この村はあの貴族たちの土地だからな」
「だからって俺が売られて良い理由にはならない。朝になったら俺は貴族の屋敷に連れて行かれる。そしたらもう逃げられない。逃げるなら今しかない。お前は俺を止めるか?」
「いや止めはしない。もし止めたとしても村で一番の剣の腕前を持つお前には負けるだろう。それに友人としてお前が奴隷になるのを見るのはいやだし、元々ここを出たがっていただろう」
「そうさ、今回のことはきっかけにすぎない。感謝するよ。たまには連絡ぐらいする」
そう言ってアーロンは足早に去って行った。



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