蛍舞う(蒼緋)完
河
あれから一年経った。あの七夕の夜の奇跡からもう一年だ。彼女を失った穴は未だに大きいし、彼女以外の女性を愛す気は全く起きないけれど、それでも俺はなんとか生きている。
あの日、俺は確かに彼女と会い、言葉を交わした。あれは夢であって夢でない気がする。誰が何と言おうと、俺は彼女に会った。俺はそう信じている。
おりしも、今日は七月七日、七夕の日。俺は一人で、蛍狩りのイベントに参加している。月のない夜。何年か前、彼女と会ったときもそうだった。
ふわり、と目の前を横切った蛍が俺の服にとまる。優しく儚い光をちかちかと放つそれは、彼女の笑顔にも似ていて。
見上げるは夜空。満天の星が輝く空には天の河。蛍のような光を放ち、闇夜に輝いている。
今宵の夢で、再び彼女に会えるだろう。
愛しい愛しい、俺の「ほたる」に。
(知ってるか?)
(あの天の河は、織姫と彦星を隔てる河じゃなくて、この世とあの世を隔てる、「天国の河」なんだ。俺はそう信じてる)
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