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夜半の風(煌鷹)完
出会い
 三百年後、とある街で。
 資料室の隅のほうで、深い溜息を吐いている中年の医者がいた。そんな彼に気づいて若者が声をかける。
 「どうなさったのですか?」
 突然声を掛けられて驚いた様子の男は読んでいた本から目を上げた。最近よく見かける顔に気付いて医者は表情を綻ばせる。
 「誰かと思えば君か、毎日ここへ来るなんて熱心だね。実は、ある病の治療方法が分からないんだ。というかそういう病気があまりにも多くてね。ああ、自分はなんと無力なのかと思って。あの本を読むことが出来るなら……」
 「あの本、とは?」
 「ほら、その、あれだよ、えっと――『ラジエルの書』だ。どうやら唯の伝説ではないそうじゃないか。探しに行きたいものだが、一人旅はやはり不安でね」
中年医者の寂しそうな表情を見て彼の真剣な気持ちを察した若者は、今まで何度もそうしてきたように好意的な微笑を浮かべて言った。
 「私でよろしければ……お供させていただいてもいいですか?」

(完)



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あきゅろす。
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