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火炎龍と狼(仮) (煌鷹)
第三章:発見

 氷垣(ヒョウエン)山に一羽の鷲……いや獅子鷲の姿が戻って来た。獅子鷲はその中腹に築かれた要塞の中へと舞い降り、着地と同時に人型に戻った。
 それを見て彼に近寄っていく者がいた。
 「長旅お疲れ様です、グリフォン兄貴」
 「ああ。それよりフォティア、隊長格以上の者を急いで、できるだけ集めてくれると助かるんだが」
 「承知致しました」
 謹厳実直なフォティアは理由を聞くことも無く走り去った。グリフォンはいつもそれをありがたく思っている…自分のようなお調子者には、彼のような、暴走を止めてくれる人物に近くにいてもらう必要がある。
 彼は大きく欠伸をして会議場へと向かった。
 (しかし毒龍の元に行ってしまったとは。もう少し早く見つけていたらなあ…交渉の余地はある。あいつがまだ気づいていなければいいのだが)
 扉に手をかけながらグリフォンは一人笑いしてしまった。自分がいち早くこの事実に気づいたという事を彼は確信している。
 会議場には既に二十名弱の部下たちが集まって円卓の自分の定位置にそれぞれ座っていた。グリフォンがそう指示したことは一度も無かったのだが、それに気づいた頃には各々が決まった席に座るようになっていたのだ。
 「お、早いな。来てないのはフォティアと……ビリュザーだけか。というよりフォティアは彼女を呼びに行ったのかな」
 彼に一番近い席に座っているソーコルが頷いた。
 「じゃあ先に話を始めてしまおう。あの二人ならまあなんとかなる…多分な。で、何だったかというと」
 話し始めようとした丁度その時に、フォテイアに呼ばれたビリュザーが扉を開けて入って来た。
 「申し訳ありません、グリフォン様」
 「構わん構わん」
 グリフォンは本当に気にしていない様子で言った。最後にフォティアが席についたのを見ると、自分もその辺りにあった椅子を引きずってきて座る。いつものことだった。しかも話が終わる頃にはグリフォンは立ち上がっていて、椅子はその辺りに毎回放置される。誰かが戻していたこともあったが、今はそんなことをする者は一人もいなくなった。グリフォンはそういう性格なのだと皆諦めたのだ。
 「この話は絶対に外部に漏らさないでほしい。いずれ明らかになることではあるが、念のためだ。俺はこの数日、〈運命の子〉を探して飛び回っていた。そろそろ現れてもおかしくない頃なのに、そんな様子が一切なかったからな」
 それは誰もが思っている事だった。〈運命の子〉はその自覚も持つようになるし、その卓越した能力から、十五歳にもなれば世に姿を現すはずだ。
 「そうしたら、だ。沙琳城でカリアスという少年が見つかった。まだ十歳になっているかどうかという年なんだが、神の実子に相応しい力を…というかかなりの術師だ。それに彼には〈導者〉がついているようだ。カリアスの近くにそのような者は見えなかったが、何らかの方法で交信している。それは間違いない」
 部屋はしんと静まりかえっているが、グリフォンは部下たちと自分の興奮を強く感じていた。
 「でな、俺はそのカリアスを暫く追っていたのだが、彼は〈導者〉の指示でファーブニルの棲む天蓋山へ行ってしまった。俺の推測では奴はまだ、その少年が〈運命の子〉である事に気づいてない」
 「では兄貴は……〈ファーブニル一派〉と何らかの関係を持とう、とお考えなのですか?」
 そうなんだよ、とグリフォンは答えた。
 「だがあいつがそれに応じてくれるとは限らないし、なにしろあいつのことだから…」
 兄貴はファーブニルに何か偏見を持っているのだろうか、とソーコルは思った。
 「考えられる選択肢は大きく二つ。〈ファーブニル〉と手を組むか、戦うかですね。もし手段を選ばないのであれば……戦闘に連れて来られるであろう〈運命の子〉を連れ去る、という方法もありますが」
 それは道理に外れているな、とグリフォンは言った。というより彼は、ソーコルが既に何らかの考えを持っていることを知っている。いつもの事ではあるが、ソーコルは他者の意見を聞いた上でしか自分の考えを言おうとしないのだ。慣れているグリフォンは話を先に進めようとした。
 「そういえばビリュザー、簡単な頼みがあるんだ。君にしかできないことだ…ちょっと聞いてくれないか?」
 突然呼ばれたビリュザーは訝しげな顔でグリフォンを見上げたが、それと同時に何の躊躇いもなく頷いていた。



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