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火炎龍と狼(仮) (煌鷹)
序章:ケイオス
 心地良い風が彼の紅い髪を揺らす。
 彼の名はケイオス。まだ24歳だが、警察組織《ガゼル》十二人のなかでも最も強いと言われる戦士だ。夜中に命令を受けて断罪に向かった彼は昨夜も眠っていない。いつものことであった。
 「帰っていたのか。いつものことだが早いな」
 聞き慣れたルー兄貴(ヒョン)の声にケイオスは振り向く。「兄貴」というものの血の繋がりがあるわけではなく、目上の人はそう呼ぶのが習慣となっているのである。
 「はい、たった今。最近満足な相手がいなくて…断罪標的を見つけることの方が余程、骨が折れます」
 「まあ、確かにそうだろうな。俺ではもう、其方の相手にはならないだろう。司祭様が練習相手になってくれれば良いのだが」
 ケイオスは苦笑した。自分たちの主であり今の世界の支配者である司祭様が戦いの練習相手をしてくれる筈がない。既にケイオスの実力は他の《ガゼル》たちを遥かに上回っている。
 しかし彼には腑に落ちないことがあった。
 司祭様の自分に対する態度が冷たい気がしてならない。最初にケイオスを《ガゼル》に招いたのは他ならぬ司祭様であるし、今まで十分過ぎるほどの働きはしてきたつもりだ。それなのに司祭様は自分を近くに寄せ付けようとしない。避けられている気さえする。自分が何か気に障ることをしたとでもいうのだろうか……
 「ケイオス?」
 ルー兄貴に声をかけられて彼ははっとした。
 「ああ…少々考え事をしておりました」
 「そうか。とりあえず俺は自分の仕事に戻る。陽が昇るまで寝ておけ…其方のことだ、どうせ寝てはいまい」
 ケイオスは一礼すると、笑いながら廊下を進んで行ったルー兄貴を見送って、自分に与えられている部屋に戻った。
 (何か理由があるに違いない)
 目を閉じると彼はすぐに眠りに落ちてしまった。

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あきゅろす。
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