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非日常の日常(和麻)完
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 この状況をどう説明すればよいか颯太は分からなかった。颯太が見開いた瞬間に火が渦を巻いて消えたのだから。水を掛けた風でもなければ、自然と燃え尽きた風でもない。それだけではなく、炭になった樹木がみるみる元の状態へと戻っていった。正に起こり得ない現象「魔法」であった。消えそうにもなかった火が一瞬で消えてしまったこと、しかも現場が元の状態になったことに、野次馬や漸く到着した消防隊員は大きくざわめいた。
「で、出来た。本当にやる気一つで……」
「……言ってみるものですね」
いつの間にか人になっていた玄がパチパチと拍手を送ると颯太は突然ぐしゃりと屈みフェンスに凭れかかってしまった。急いで玄が寄ると颯太が酷く弱っていることに気がついた。魔法使いの血のために弱くなっていた体が今の特大の魔法によって遂に悲鳴を上げたらしい。直感的に颯太は寿命を悟った。このまま寝てしまったら二度と目を開ける自信がない。魔法使いは命と引き換えに魔法を使っていたのではないかと思うほどの疲れであった。
「俺やっと分かった。俺たちが長生きできない理由」
ぜえぜえと息をしながら颯太が口を開いた。玄が何ですかと言わんばかりの表情で彼を覗き込む。
「こんなあり得ないことを起こして厄介なことになる前に、とんずらするためだ」
「この世からのとんずらですか」
力なく笑う主人を見て縁起でもないことをと漏らす。続いて何を思ったのか玄は空を見上げた。
「どうやら起こり得ない事というものは続けざまに起こるようですよ」
見上げる玄と同じように颯太も空を見上げた。空は雲ひとつなく広々としている。が、その青い空に一筋の光線が見えた。
「何あれ。流れ星?」
「今は昼間です」
正体は掴めないが一つだけ分かることあった。その光線は間違いなくこちらに向かっているということであった。それはどんどん颯太に向かって落ちてきている。本来なら避難するところだが体が言うことを聞かない、そもそも見上げるのさえ億劫なのだ。もう死んでしまうのだから流れ星だろうと何であろうと当たってしまえば良い。そう自棄になる颯太がいた。玄はというと至って落ち着いておりこれから何が起こるか分かっている様な様子であった。 そうこうしているうちに光線は確実に目で確認できる程まで接近していた。「お父上はどうやら主人をとんずらさせたくないようですね」
聞き返す間もなく光線は颯太の目の前で爆ぜた。



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あきゅろす。
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