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境界線上のエリア (薩摩和菓子)
避けられない閃光
熱く、湿度が高い八月の空気を切り、昇天。
上空に達し、開花。
儚げに、消滅。
僕は幼馴染の椎と一緒に座り、花火の一群を見ていた。僕が椎を花火大会に誘ったのだ。本当は、椎は行きたくなかったらしい。椎はあまり体の強い方ではなく、何時も人込みを避けていた。でも、僕が熱心に誘うと提案に乗ってくれた。
早く来て場所取りをした甲斐があって、僕と椎は最前列に広げたレジャーシートの上に座っている。
「きれい、だね」
椎が傍らで、少しぎこちなく呟いた。
「うん。そうだね」
僕は唯同意した。空の見上げ過ぎで首が痛くなってきたので、上体を少し寝かせようと斜め後ろに手をつく。その時だった。
前方から、閃光が大きくなってくる。そして、
僕の前で、爆発した。
炎が瞬く。
衝撃と化した音。
破片が、拡散した。
咄嗟に僕は自分の頭を庇う。両腕に破片が食い込む。その間、周りは見えない。
音が止み、僕は両腕を顔面から退かした。急いで椎の方を見る。
椎は手で片目を押さえていた。そして指の隙間から、血とゼリー状の何かが流れ落ちていた。

五年前の夏、椎は花火の暴発で片目を失った。


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