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十五年越しの殺意(外村駒也)完
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 神奈川県警の鈴木刑事が、鶴見にある清水の家を訪れてから、既に3時間が経過していた。
 外で張り込みを行っている岡部らは、かなり苛立ちを募らせていた。
「鈴木はまだ出てこないのか。裏口から既に出てしまったといったことはないだろうな。」
 既にしびれを切らしていた岡部が言った。
「それに関しては有り得ないです。マンションの四方を張っていますし、裏口のような場所はありませんから。」
「だが、それなら彼らは中で何をしていると言うんだ。いくら何でも、聞き込みに3時間もかけたりはしないだろう。これじゃあ鈴木は、自分と清水に繋がりがあることを公言しているような……」
「おい、静かにしろ、岡部。鈴木が出て来たぞ。」
 マンションから出て来たのは鈴木だけでなく清水も一緒だった。
 二人は鈴木が乗ってきた車に乗り込み、今にも走り去ろうとしていた。
「俺と河西刑事で尾行をするから、誰か一人は管理人に聞き込みと出来れば清水宅の捜索、他の者は警視庁に戻って津野刑事らの手伝いを頼む。」
 と、岡部は指示を出し、河西と共に尾行を開始した。
 鈴木たちは、青木か渡嘉敷と接触を図るのでは、と思われたが、ほとんど真直ぐ神奈川県警を目指して車を走らせていた。
 岡部らの尾行に気づいて、撒こうとする動きも見せていなかった。
「なあ、岡部。本当に彼らは、一連の事件と関係があるのか。」
 尾行の最中に河西が質問した。
 河西刑事は、岡部とは同期の間柄であるが、神田部長によって今回の事件の捜査本部に追加動員された捜査一課の刑事の一人である。
 その為か、事件に対する武井警部らの捜査方針に関して、素直にそれを受け入れてはいなかった。
 神田刑事部長の息がかかっている者らは、基本的に県警を指示する立場をとっていたからである。
「事件の当事者であることは間違いないと思う。ただ、それと今日見せている動きとの間に、必ずしも関連があるとは言えない。」
 と、岡部は答えた。
 河西はただ、「そうか。」としか言わなかった。
 尾行開始からおよそ30分、JR東神奈川駅に着いた頃だった。突然、鈴木が車を止めて、清水が駅構内に入ってしまった。
 慌てたのは、尾行をしていた岡部である。このままでは、二手に分かれての尾行しか出来ない。一対一になってしまう。
 だが、問題はそこではない。河西が、岡部の望むとおりに行動してくれるかどうかに懸かっていた。
「河西。このまま一人で鈴木の尾行をやって貰えるか。」
「……分かったよ。引き受けてやる。」
 少し間があって、河西は答えた。
「ありがとう。俺は清水を尾行する。何かあったら、忘れずに連絡してくれよ。」
 岡部はそう言って車から降り、清水を追って改札を通って行った。

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あきゅろす。
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