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十五年越しの殺意(外村駒也)完
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 翌29日、武井の元に朗報が届いた。
 東京多摩病院の集中治療室に入っていた元西が、意識を取り戻して、一般病棟に移ったとのことだった。
 まだ、意識を取り戻して間もない為、面会は禁止されてはいるらしかったが、記憶喪失などの後遺症も現段階では見つかっていないとのことだった。
 これは、警視庁の捜査本部にとっては、非常に良い知らせで、捜査の気合いを入れ直すきっかけにもなったみたいである。
「元西さんから、何か聞けるかも知れませんね。」
 報告を受けて、小川も嬉しそうである。
「ああ。特に、捜査が進展したきっかけが、元西君の残したSAだったからな。他にも何か知っているかも知れない。もしかしたら、渡嘉敷についても掴んでいたことも考えられる。」
「そうすると、事件はほぼ解決ですね。」
「ああ、そうなるな。だが、その前に、私達の方でも一つの仮説を立てておかねばなるまい。全て彼に頼る訳にはいかないからな。」
 しかし、実際のところ、武井と小川、そして吉岡の三人の捜査は、あまりはかどっていなかった。
 青木と、宮田中出身者の殺害された5人及び栗原の接点が、どうしても見つからないのである。
 最終的に武井たちが出した結論は、彼らの接点は15年前の事件にある、ということだった。
「しかし、警部。15年前の今川愛奈が殺害された事件では、松田は関わったとしても、他の5人はどういった関係があったのでしょうか。どうにもなさそうに見えますが……。」
 と、吉岡が言うと、
「私も6人全員が関わったとは考えにくいのですが……」
 と、小川も同調した。
「その点に関しては、私も6人全員に15年前の事件とつながりがあったとは思わない。しかし、少なくともそれ以外の点で彼らにつながりが見えないし、青木が彼ら6人に憎悪の念を持つ理由も見つからない。何らかの関連があったことは否定できないんじゃないかな。」
 と、武井は説明した。
「私が考えるもので、可能性があると思うものは、例えば、松田を除く5人が、今川愛奈を見殺しにしたとか、それぐらいしかありませんよ。」
 と、小川は頭を悩ませて言った。
「しかし、ガワさん。それだけの理由では、渡嘉敷が青木を動かすことは出来ない筈だよ。」
「それは分かっていますが、その理由が思い浮かばないんですよ。」
「とにかく、15年前の事件の記録から調べ直そう。それから、事件を担当した者も見つけて話を聞いたほうが良さそうだ。」
「調書などはうまく残っているでしょうか。神奈川県警が所轄の事件だったので、鈴木刑事に記録を消されている可能性もありますよ。」
 と、吉岡が心配そうに言った。
「取られた調書がないとしても、記録自体は残されている筈だろう。それが消えたら警察全体の問題になるからな。だから、最悪事件の大まかな記録しか残っていないとしても、そこにヒントはあると思う。心配しなくても構わないさ。」
「今すぐ動きましょうか。」
 小川はかなりやる気である。
「ああ、急いだ方がいいかも知れない。県警に直接出向こうか、ガワさん。」

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あきゅろす。
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