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十五年越しの殺意(外村駒也)完
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「宣戦布告のような形になりましたが、大丈夫でしょうか。」
 帰りの車の中で、小川はだいぶ心配そうに言った。
「だが、これで向こうも慎重になるから、そう簡単に次の事件は起こさなくなるだろう。」
「しかし、やけくそになったりはしませんかね。」
「大丈夫だろう。今まで慎重に貫いてきた彼らだ。無謀なことには走らないだろう。逆に心配なのは、全く動きを見せなくなることだ。」
「しかし、復讐は最後までやり遂げると思いますよ。」
「それは同感だ。だが、その最後の復讐だけはなんとしてでも止めなければならない。」
「やはり、栗原が標的でしょうか。」
「ああ。恐らくそうなるだろう。」
 と、武井は言った。
「ところで、警部は、青木が渡嘉敷に操られていると思いましたか。」
 小川が唐突に話をかえて聞いた。
「そのことなんだが、なかなか確証を持てずにいるよ。私としてはそうだと思うんだが、今日の青木の様子では、自分の意思で正しいことをやっているんだ、自分は悪ではなく正義だ、といった感じだったからねえ。」
「渡嘉敷が青木を意のままに動かしているとして、青木がそれにすんなりと従う理由は何なのですかね。」
「そこなんだよ、問題は。当然しかるべき理由があるのだろうが、今は皆目見当がつかない。」
 と、武井は言った。
「やはり、渡嘉敷と青木の間を調べる必要がありますね。例えば、渡嘉敷が青木の命の恩人だった、とかいうことがあったら、渡嘉敷にとって邪魔な人間を青木は容赦なく消していくんじゃありませんか。」
「そうは簡単にはいかないよ。だが、渡嘉敷の敵が、青木にとっても敵であるように仕向ければ事は済む筈だ。」
「すると、何らかの形で、青木が納得する理由がある筈ですね。」
「ああ。こじ付けにせよ、何かしらの根拠はあるはずだろう。調べるしかなさそうだな。」

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あきゅろす。
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