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十五年越しの殺意(外村駒也)完
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 翌28日、武井の元に、捜査四課の本橋警部から連絡が来た。
 元西を襲った黒沢会花山組の団員の取調べに関してのことであった。
 数日間の取調べの末、遂に彼に指示を出した者の名前が出てきたのである。
 三村というその団員の話によると、その男の名前は倉渡俊樹という。少なくとも、その男はそう名乗ったらしい。
 しかし、捜査四課が調べたところ、倉渡俊樹という人間は実在しないとのことだった。つまり、予想された通り偽名だったのである。
 だが、何者かが三村に元西を襲うよう指示を出したことは間違いなく、三村個人の意思ということは有り得なかった。
「この倉渡俊樹は誰だと思う。」
 武井は、傍にいた小川と吉岡の二人に聞いてみた。
「一連の事件に関係した人間であることは間違いないとは思いますけど……」
「青木、清水、渡嘉敷、鈴木のうちの誰かということじゃないんでしょうか。」
「勿論それはそうだと思うが、共犯者の中に、まだ名前の挙がっていない人がいないとも限らない。」
 と、武井は言った。
「共犯者が他にいないとして、三村を唆したのは4人の中で最も黒幕的な存在の人だと思いますね。」
 と、小川は言った。武井が、何故そう思うかを問うと、
「共犯者が勝手に他人に仕事を請負わせるのは、危険だから有り得ないと思います。だから、三村が信用のおける人間かを、主犯の人が確認してから実際に依頼したと思います。ただ、そうだとしても、間に人を介して依頼するのは、いろいろと面倒が起こりかねないので、やはり、一連の事件の首謀者が直接依頼したと思いますね。」
 と、小川は説明した。
「すると、青木が依頼したということですか。」
 と、吉岡が聞いた。
「違うと思うのかい。」
「自信はありませんが、倉渡俊樹という名前をローマ字で書いてみると、Kurawata Toshikiになります。これを並べ替えると、Tokashiki Wataruに、つまり、渡嘉敷航になるんです。」
 と、吉岡は紙に書いてみせた。
「倉渡俊樹は、渡嘉敷航ということか。しかし、私たちをミス・ディレクションに誘う罠かも知れないよ。青木が倉渡と名乗ることで、捜査を撹乱する狙いかも知れない。」
「その可能性も分かっていますが、一応渡嘉敷の線で調べてみたいです。」
「分かった。その可能性も否定は出来ないから、もう一度渡嘉敷の身辺を洗うことにしよう。」

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あきゅろす。
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