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十五年越しの殺意(外村駒也)完
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 その日の夜、武井は再び部下を集めて、会議を行った。
 捜査がそれなりの成果をあげている為であろうか、数日前までの重々しい空気はなくなっていた。
「今日の夕方頃、神奈川県警の杉山刑事から電話を貰った。」
 会議の冒頭に、武井はこのように切り出した。
「杉山君の話によると、県警の鈴木刑事が青木修平と内通している可能性があるらしい、との事だ。」
「それは一体どういう理由からですか。」
 と、岡部が聞いた。
「鈴木と青木は、高校時代の同級生だったそうだ。今回の事件の捜査で、二人は間違いなく顔を合わせているから、連絡をとってもおかしくない。」
「しかし、高校時代の青木と、今の青木は異なる人物です。鈴木刑事が今川周平と同級生だったならば、その理由は頷けますが……。」
 と、今度は吉岡が異を唱えた。
「だが、私たちは元西君が意識不明の重体であることを、外には漏らしていない。しかし、鈴木刑事は知っていた。すると、やはり何らかの形でつながっていたと見るのが普通だろう。」
 今度は武井に反論する者はいなかった。理由はどうあれ、県警の鈴木が今回の事件の犯人グループと関係があるのは、明白であった。
「あくまで私の予測に過ぎないが、恐らく鈴木刑事は今川周平との面識もあったのだろう。今回の事件が起こったとき、捜査の過程で犯人に青木修平が含まれることはすぐに分かったに違いない。しかし、青木本人は既に死亡していて、今川が青木になっていることを知ったと考えられる。すると、かつて今川周平の身に起こったことも知っていたとすれば、今回の事件が復讐を目的としていると、鈴木刑事は感付いただろう。復讐目的の事件の場合、どうしても犯人側に同情してしまうことはある。まして、それが自分の知人ともなれば尚更そうなるだろう。多分それで、鈴木刑事は青木に加担しているのかも知れない。」
 と、武井は自分の見解を述べた。
「……すると、誰かが鈴木刑事を見張る必要がありますね。」
 津野が確認するように聞いた。
「それに関しては問題ない。県警の杉山刑事に動向を見て貰うことにしてある。」
「そうですか。」
「ところで、岡部君はどうだったのかね。」
 と、武井が聞くと、
「実はあの後、僕がつけていたのと同一の人物が再び横浜方面に向かって行ったので、一応尾行しましたが、鶴見の近くで撒かれてしまいました。」
「鶴見というと……」
「清水遥の自宅近辺です。念の為、清水の家まで行ってみましたが、車が停められていた訳でもなく、結局見失った形になりました。」
「撒かれてから清水宅まで何分かかったんだい。」
「20分です。もし清水に用があったとしても、既に去ってしまったと考えられます。」
「それに乗っていたのはN商事の人間なのか。」
「男性だったとは思いますが、帽子を目深にかぶっていたので確証はありません。」
「それならば、清水本人が運転していて、どこかに乗り捨てて自宅に戻った可能性があるんじゃないかな。車のナンバーは分かるかい。」
「横浜500の32-51です。県警側に捜索と調査をして貰うのですか。先程の状況だと危険そうですけれど。」
「いや、あえて県警の動きを見れる機会と考えるべきだろう。明日、私の方から頼んでみよう。岡部君は、引き続き青木をしっかり見張ってくれ。」
 と、武井は頼んだ。
 岡部の行動は収穫があったが、実際岡部が青木から目を離した隙に、青木が動いた恐れもあるのだ。N商事の者と思われる人間は陽動で動いたかも知れないのである。咄嗟の判断は善悪の両面を持ち合わせている。
「因みに共犯者の件だが、私とガワさんと吉岡君とで、渡嘉敷について調べている。後数日で、共犯者は出揃いそうだ。残りの者は、栗原と清水の周りに気をつけろ。」
 残りの者とは、神田部長に許しを得て、捜査本部に追加された5人の刑事である。武井が神田部長と話をつけ、捜査の延長が認められたのであった。
 栗原は、犯人グループとは無縁に思われたが、狙われる危険がある為、護衛をかねての監視である。
 一方の清水は、彼女と青木の接触を監視するためであった。

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