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十五年越しの殺意(外村駒也)完
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 その頃岡部は、とある男性の尾行を行っていた。
 その男が乗る車の車体には、N商事薬品部の文字が書かれている。
 その男は、今から15分ほど前に青木の自宅にダンボールを一箱運び込み、その帰途についている所だった。
「もしもし、こちらは岡部ですが、武井警部をお願いします。」
 尾行の対象が、N商事の本社の地下駐車場に入ったところで、岡部は一旦尾行を止め、武井に報告するために電話を掛けた。
 しばらくして、武井が電話口に出た。
「岡部君か。何か分かったかね。」
「青木とN商事の人間が接触していました。尾行をしたところ、本社の地下駐車場に入ってしまったのでそれ以上は断念しました。」
「君の判断ではどう思う。」
「そうですね、青木が化学科の教師をしているので、判断は難しいです。」
「それはどういう意味だい。」
 と、武井が聞いた。
「青木と接触した人が乗っていた車には、N商事薬品部の文字がありました。実験に使用する薬品をN商事から仕入れていただけかも知れません。警部ならどう思いますか。」
「一応、時期が時期だから、渡嘉敷と青木のパイプライン的役割を果たしていたんじゃないかな。」
「やはりそう思いますか。これからどうしますか。渡嘉敷に鎌をかけてみましょうか。」
「まだ渡嘉敷が事件に関連している証拠が出ていないから、下手に刺激するのは止めたほうがいい。」
「しかし、圧力をかけることによって、尻尾を出すかも知れませんよ。」
「だが、逆に慎重になって、動きが見られなくなるかも知れない。現段階では、青木と接触をしたところから考えると、まだ何かをやらかすだろう。しばらく様子だけを見るんだ。」
「これからどうした方がいいでしょうか。青木の監視に戻るべきですか。」
「ああ、そうしてくれ。渡嘉敷の方は、私とガワさんで何とかしよう。」
「よろしくお願いします。」
 岡部はそう言って電話を切り、青木の自宅へと戻ろうとしたとき、例の男が地下駐車場から出てきた。
 今度は普通の乗用車に乗っている。
 帽子を目深にかぶって、顔をよく見ることは出来なかった。
 岡部は念のため車のナンバーを書きとめて、相手の様子を窺っていると、どうも先ほど来た道を引き返して、横浜に向かっているようだった。
(尾行をすべきだろうか。)
 と、岡部は一瞬迷ったが、やはり後をつけることにした。

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あきゅろす。
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