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十五年越しの殺意(外村駒也)完
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「まるで一卵性の双子じゃないか。」
 捜査から戻ってきた武井が、最初に発した言葉だった。
「……彼らに血縁はないのか。これでは見分けがつかない。」
 と、小川も頭を抱えるほどだった。
 傍にいた津野が、思い出したように言った。
「そう言えば、二人のアメリカ留学の件ですが、留学先の高校は異なっていたのですが、ホームステイ先が同じ地区でした。」
「どのくらい近いところなのかね。」
「それが、地図上で200メートルも離れていませんでした。アメリカで二人が出会った可能性は否定できません。」
「青木は、高校卒業時に胃潰瘍を患っていました。また、気胸で緊急入院した形跡もあります。複数の重い病にかかっていたみたいです。」
 と、今度は吉岡が報告した。
「つまり、いつ病死してもおかしくない状態だった訳か。」
「はい、そうなります。最悪の場合、今川が病死に見せかけて殺害した可能性もあります。」
「いずれにせよ、何らかの形で青木が死んでいたということか。」
「それから、今川が失踪後に石川県に向かったか、という話ですが、確認は取れませんでした。しかし、親しい友人には、石川県を訪れたいといったことを漏らしていたみたいです。」
「恐らくやはり、青木が浪人していた2年間の内に、青木は病死して、今川と入れ替わったということになりそうだな。少なくとも、二人が接触した可能性は大きい。」
 と、武井は言った。
「よし、青木が今回の主犯という線で捜査を再開しよう。津野君は、10日、13日、14日、18日、21日の青木のアリバイを調べてくれ。特に、被害者の死亡時刻に、彼がどこで何をしていたかを重点的に頼む。」
「分かりました。」
「岡部君は、青木をしっかり見張ること。吉岡君には、私とガワさんの仕事を手伝って貰いたい。」
「共犯者の件でしょうか。」
「そうだ。あくまで私の推測でしかないが、宮田中の同窓生であった清水遥、N商事の渡嘉敷航、この二人が共犯の可能性がある。それから、既に死亡した中田俊も、調べる必要があるだろう。」
「すると、中田殺しは仲間割れですか。」
 と、吉岡は聞いた。
「いや、脅迫して他の殺人などを請負わせ、必要が無くなって殺したと見るべきだろう。」
「あえて復讐の対象に手を汚させた訳ですね。」
「そういうことだ。それから、警察内部も見てみる必要がある。君たちの中に、犯人に密通しているものはいないと信じているが、神奈川県警や、神田部長とつながりのある者なら分からない。」
「しかし、まさか部長が漏らすことは……」
「有り得ないとは言い切れない。部長はお人好しだから、特に権力者に何か頼まれたら何でも行うだろうし、本人が気づかない内に漏れることもあるだろう。」
「しかし……」
「あくまで可能性だ。私だって、警察の中に犯罪者がいるとは思いたくないよ。」
 と、武井は真剣な眼つきで言った。

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あきゅろす。
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