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十五年越しの殺意(外村駒也)完
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 会議の後、武井は福田捜査一課長に呼ばれ、彼の部屋へと向かった。
「今朝、捜査四課の本橋警部に会って来たよ。捜査の協力をお願いしたら、すんなりと引き受けて貰えてね。」
 と、福田は話を切り出した。
「そうですか。ありがとうございます。」
「それで、元西君のことについて聞いたんだが、やはり確かに、花山組に対して特に厳しく捜査にあたっていたそうだ。」
「すると、犯人がそれを利用した可能性があるということになりますね。」
「まあ、落ち着いて結果を待とうじゃないか。9時ごろに報告に来ると言っていたから、そろそろだろう。」
 10分ほどして、本橋が部屋へ入ってきた。随分と疲弊している様子だ。
「いやあ、大変ですね。暴力団は基本的に一枚岩ですからなかなか切り崩せません。」
「情報は得られず、か。」
 と、福田が聞くと、
「いや、そんなこともありませんよ。5人ほど部下を走らせて、何とか話を聞くことが出来ました。」
 と、本橋は笑みを浮かべて答えた。
「また何かの取引をしたのかね。」
「法に触れるようなことは流石にしませんでしたが、花山組が他人に知られたくないことを黙っておく、といった感じですかね。」
「一体何に関してだ。」
「花山組が、上部機関の黒沢会に内緒で、他の組と縄張りの調整を行ったそうです。多少の武器が流れたらしいですが、まあ、そこには目を瞑るという条件を出しました。」
 と、本橋は笑って言った。
「取り締まらなくて大丈夫ですか。」
 と、武井が心配そうに聞いたが、それに対して本橋は、全く問題ないといった風だった。
「今では多少武器が流れても、簡単には使用されない時代です。暴力団同士の抗争は、ある程度落ち着きを見せていますからね。それよりも、内部で揉め事が起こると、粛清などが行われますから、そちらの方が危険でしょう。花山組は、黒沢会に消されたくはないでしょうから。それに、武器は流れた方が出所を掴み易い。」
「それでどんな情報を得られたんですか。」
 と、武井は急かす様にして聞いた。
「どうも、花山組の幹部の話だと、数日前に、何者かが手製のダイナマイト100発と引き換えに、団員一人の命が欲しいと持ち掛けたそうだ。」
「ダイナマイトを100発も、ですか。」
「ああ、そうだ。それで理由を聞いたらしいんだが、結局教えて貰えなかったそうだ。もちろん汚い仕事に就かせることは予想したらしいが、例の件で武器が不足していたから、受け入れたそうだ。」
「元西を殺すために雇った、といった話はなかったのかい。」
「さり気なく元西の名前を出してみたが、反応は駄目だったね。あれはシロだ。組に責任は無いよ。」
 と、本橋は言った。
「そうですか、分かりました。それでは、現行犯で逮捕された団員の尋問をお願いします。何とかして、黒幕の名前を引き出して欲しいです。それが、一連の殺人事件とかなり関わりがあるでしょうから。」
 武井がそう頼むと、本橋はすんなりと受け入れた。
 きっと、本橋としても、かつての部下の元西の敵は討ちたいといった気持ちだったのだろう。
 武井は、事件が解決に向かって確かな一歩を踏み出したことに、安堵の気持ちを抱いて、福田の部屋を出た。

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