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十五年越しの殺意(外村駒也)完
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 武井は相棒の小川刑事を連れて、現場へと向かった。
「ガワさん、最近ちゃんと眠れているかい。」
「いやあ、さすがにこうまで事件が毎日続くと、息をつく暇さえないですよ。」
「そういえば、昨日の夜に、神奈川県警の原口警部から電話があって、向こうの方の事件の被害者が、東京在住なんで、協力してくれって言っててね。だから、そっちの方も手をつけないとまずいな、あの人はせっかちだから。」

 しばらくすると、問題の現場についた。すでに、どこから聞きつけたのか、記者がかなり集まっていた。
 検死官の話によると、水死体に良くある特徴が見られ、大方溺死と見ていいらしい。裸の状態で打ち上げられていたため、身元を特定する手がかりは、今のところは無いという。
「参ったね、全く手がかりがつかめないとなると。自殺と他殺両方の線があることになる。」
「しかし、警部。ここから少し上ったところにある橋で昨晩、車のトランクから、何か大きなものを橋の下へ投げ捨てたのを見たという報告が入っています。」
 と、小川は言った。
「車のナンバーはわからないのかい。」
「やはり夜だったのと、よくあの辺でごみの不法投棄があるので、注意して見なかったのか、あまりよく覚えていないそうです。」
「そうか、まあ仕方がない。とにかく捜査本部を設置してから、解決していこう。それより、ガワさん。さっきの件なんだが、この人の経歴などを調べておいてくれないか。」
 そう言って武井は、「N商事中央管理部総務課課長 松田隆文 30歳」と書かれたメモ用紙を、小川に手渡した。
「中央管理部課長、ですか。この若さでずいぶん立派な役職ですね。」
 と、小川は言った。


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あきゅろす。
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