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十五年越しの殺意(外村駒也)完
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「原口警部、話によるとあの元西が意識不明の重体だそうですよ。」
 県警の鈴木刑事が報告しているのが聞こえる。
「そうか。これで我々の捜査の邪魔はされなくなった訳か。元西には不幸だったが、まあ、仕方ないだろう。下手に事件に首を突っ込んだのは彼なんだからな。」
 と、原口が言う声もドア越しに聞こえてきた。
 県警の杉山は、ただ単に廊下を通りかかっただけであったが、原口の部屋の前で盗み聞きをしている状態になってしまっていた。
「そもそも彼がここを辞めさえしなければ、こんなことにもならずに済んだし、警部補昇進まで約束されていたのに、ほんとに損な人ですね。全く馬鹿らしくて……」
「何故、そんなことを言うのですか。」
 杉山はついに耐えられなくなり、ドアを蹴破るような勢いで部屋に入り、怒りを顕わにした声で言った。
「……外で聞いていたのかね。」
「たまたま通りかかって聞こえてきただけです。いけませんか。」
 杉山の口調は、ついついきついものになってしまっていた。
「別に構わん。ただ、それならそのまま部屋に入って貰った方が、ありがたかったがな。」
「そうですか。それはともかく、どうして元西さんに対して、先程のようなことを言っていたのですか。そもそも、警部が彼を追い出した様なものじゃないですか。」
「何を言っているんだね。彼が捜査方針に反対したから、従えと言っただけじゃないか。それがどうして、私が彼を追い出したということになるのかね。」
「元西さんはただ自分の見解を述べただけです。それに、ちゃんとした犯人の動機なども裏付けることが出来、私にとっては栗原犯人説よりも筋が通っているように聞こえました。」
 と、杉山は反論した。
「しかし、栗原が犯人という可能性だって、低くは……」
「それでは、捜査は今どこまで進んでいるのですか。栗原が襲われた時刻と、山口が殺害された時刻の矛盾は解決できましたか。近藤夫妻の誘拐および殺害の件はどうですか。その時刻に栗原が自宅にいたことは、丸山刑事によって確認されていますね。一体どうなんですか。」
「……それぞれが単独の事件と考えれば済む話だ。」
 と、原口が言ったが、心なしか自信がないように、杉山には聞こえた。
「何故そこまで、一つの考え方に固執するのですか。何かの意地ですか。」
「君には関係のないことだ。話がそれだけなら、もう戻りなさい。」
「そうですか。失礼しました。」
 杉山はそう言って、部屋を出たが、心の中にかえって一つ、新たな疑問が浮かんでしまっていた。
(鈴木刑事は、どこからあの情報を得たのだろうか。)

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あきゅろす。
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