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十五年越しの殺意(外村駒也)完
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 警視庁に戻った武井は、まず福田捜査一課長に元西のことを伝えることにした。
「そうか。元西君が意識不明の重体か。今川の手の者にやられたのか。」
「暴力団の黒沢会花山組の人間が直接は手を下しましたが、黒幕は間違いなく今川だと思います。」
「暴力団か。捜査四課に手伝って貰わねばならないな。そう言えば、元西君は昔、うちの捜査四課の刑事だった筈だが、その時に花山組の取締りに力を入れていたんじゃないかな。」
「それは本当ですか。」
「多分そうだったと思うんだが。四課の本橋警部に協力を要請するついでに聞いておこう。」
「ありがとうございます。」
「ところで、事件の捜査の方はどんな感じだね。」
 と、福田は聞いた。
「今川の可能性がある人間はそろそろ分かると思います。まだ、共犯者の線では上手くいっていませんが。」
「わかった。一応順調に進んでいると、神田部長に伝えておくことにしよう。戻って捜査を続けて構わんよ。」
 武井が捜査本部の部屋へと戻ると、小川が大量の書類を机の上に並べ、片っ端からページを捲っていた。
「ガワさん、何か思いついたのかい。」
 と、武井が声を掛けると、
「あ、警部。戻っていらしたんですか。気付きませんでした。」
 と、驚いた様子だった。だいぶ集中していたのだろう。
「丁度良かったです。前に大谷の家の床下から見つかった3枚の書類をどこにしまったか分からなくなりまして……。」
「それなら私の机の中だ。鍵が掛かっていると思う。」
 と、武井は言って、机の引き出しから書類を取り出した。
「実はその中に青木の名前があったんじゃないか、と先程思い立ったんです。」
 よく見てみると、確かにそこには「青木修平」の名前があった。
「青木修平か……ん、ガワさん、これは大変な発見だ。SAじゃないか。元西君の手帳にあった。」
「本当ですね。ということは、やはり青木修平が今川周平でしょうね。」
 と、小川が興奮して言った。
「まだ、焦ってはいけないよ。私たちが今日あった青木が、この青木修平とも限らないし、そもそも元西君の書いたSAが今川周平の正体とも限らないんだ。」
「ただ、可能性はだいぶ高いと思いますよ。この他にSAの指す意味なんて無いと私は思います。」
「とにかく、明日の朝一番に横浜の市役所に行って、青木の戸籍謄本を見せて貰ってからだ。それまでは焦ってはいかんよ。」

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