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十五年越しの殺意(外村駒也)完
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「ガワさんは、彼を見てどう思ったかい。」
 警視庁へと戻る車の中で、武井は小川に聞いてみた。
「彼というのは、青木のことですか。」
「そうなんだが、どうも栗原が犯人に決まっているような言い方だったからね。」
「確かに、よく飲みに行くほどの同僚としてはおかしいですね。」
「そうなんだよ。普通なら、栗原には殺人は出来ない、といったふうに弁護をするものだと思うんだよ。」
「すると、警部は青木が怪しいと思われるんですか。」
 と、小川は聞いた。
「少しだけね。例えば、県警の刑事によって、栗原が犯人で間違いないと頭に刷り込まれていたとしたら、彼の発言も頷けるかも知れない。しかし、そうでなかったならば、彼が真犯人で、栗原に罪をなすりつけようとしていることになるかも知れない。」
「つまり、青木が今川周平ということですか。」
「あくまで可能性の話だからね。そうだという保証はどこにも無いよ。ただ、年齢的にはあっているし、なんとなく彼の名前を他の所で見た気もするからね。」
「青木について調べましょうか。」
「その方がいいかも知れないな。明日、市役所に行って戸籍を見せてもらうか。そうだ、一つ忘れていた。東京多摩病院に寄って貰えるかい。」
「いいですが……」
「この信号でUターンしてくれ。出来れば信号が赤になる寸前にだ。」
「分かりました。」
 小川は武井と目を合わせて頷いた。
 スピードを少し落とし、信号が黄色になったのとほぼ同時にハンドルを大きく右へと切った。
「尾行されていましたか。」
 Uターンして、一つ前の信号を右折したとき、小川が武井に聞いた。
「多分な。3台ほど後ろだったと思う。確証はないが、少し不自然だったんでね。サングラスをかけて顔を隠していたし、みなと総合からずっと後ろにいたからな。」
「青木でしょうか。」
「いや、それは無いと思う。青木が今川なら、共犯者の内の誰かだろう。そうでなければ、今川本人かも知れないがな。」
 しばらくして東京多摩病院に着くと、二人は元西のいる集中治療室へと向かった。
「様子はどうですか。」
 と、武井が担当の医師に聞くと、
「まだ意識は戻りませんね。しばらくはこのままかも知れません。ただ、容態は安定してきているので、生命に関わる危機に陥るようなことはないと思います。」
 との答えだった。
「記憶喪失になる恐れというのは、どれくらいでしょうか。」
「今は何とも言えません。意識が戻らない限りは分からないと思いますね。」
「4日以内に意識は戻ると思われますか。」
「そうあって欲しいとは思いますが、死ななかったことが奇跡に近かったので……。」
「そうですか、分かりました。何か変化があったら連絡を下さい。」
 武井はそう言って、電話番号が書かれた紙を手渡し、小川と共に病院を離れた。

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