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十五年越しの殺意(外村駒也)完
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 車に乗り込んだ二人は、栗原に教えられて、青木の自宅ではなく、市立みなと総合高校へと向かった。青木は化学科の教師であるため、休日でも高校の方で研究をしていることが多いからである。
 既に時刻は午後7時を回っていたが、青木はまだ高校に残っていた。
「すみません。警視庁捜査一課の武井ですが、青木さんですか。」
「はい、そうですが……。」
「いきなりお伺いして申し訳ありません。実は、とある事件について聞きたいことがありましたので。」
「あ、構いませんよ。先ほど、栗原からも電話を貰いましたが、3月10日に彼が襲われたことに関してですよね。」
「まあ、そのことが中心ですね。その日に、栗原さんから飲みに行かないかと電話を貰ったのは何時ごろだったか覚えていますか。」
「えっと、確か5時過ぎだったと思います。」
「その時はどちらにいましたか。」
「例によって研究の最中だったので、ここにいましたよ。それが変な電話で、今すぐ飲みに行かないか、って言うんですよ。5時過ぎに飲みに行くなんてほとんどありませんから。」
 それを聞いて、武井はつい笑みをこぼしてしまった。
「何か可笑しいですか。」
 と、青木が怪訝そうな顔で聞くと、
「栗原さんが必死だったことがよく分かりますから。」
 と、武井は答えた。
「すると、やはり彼がスカイビルの事件の犯人なんですか。犯人だからアリバイを作ろうとしていたんですよね。」
「いえ、違います。栗原さんはたまたま事件の場に居合わせただけです。」
「でも、逃げ出したんですよね。つまり彼に後ろめたいことがあった、ということじゃないんですか。」
(この男は、やたらと栗原が犯人じゃないかと聞いてくるな。)
 と、武井は不意に思った。
(これは単に、栗原のことを心配しているのか、それとも、この男が事件に一枚咬んでいるのか。)
「状況が悪かっただけで問題ありませんよ。」
 と、武井は言っておいた。
「ところで、栗原さんが何者かに襲われたあと、最初に発見したのは青木さんですよね。」
「はい。約束の時間になっても来ないので、少し心配になって駅の方まで歩いてみたんです。電話を掛けても出なかったですし。」
「彼が発見された場所は中華街から関内駅に向かった所でしたね。栗原さんが関内駅から来るとどうして分かったんですか。」
「横浜から電話を貰いましたから、近いほうの駅で降りると考えただけです。」
「分かりました。まだいくつか質問がありますが、また明日の午後にお伺いさせて頂きます。宜しいですか。」
「はい、いいですよ。」
「今日はありがとうございます。」
 そう言って、武井と小川の二人は、市立みなと総合高校を出て、警視庁へと戻って行った。

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あきゅろす。
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