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十五年越しの殺意(外村駒也)完
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「今回の事件は、まず10日に横浜のスカイビルで行われた宮田中の同窓会で、松田隆文が殺されたことから始まりましたよね。」
 小川は、ゆっくりと思い出すようにして言った。
「ああ、そうだな。確か、死因は青酸カリによる中毒死。だが、ナイフを背中に突き立てられた状態で発見されたんだった。」
「それから、死亡時刻の前後で、ビル全体が停電しました。その時に松田と同じ部屋にいたのが栗原一人でしたね。」
「それが理由で、県警側は栗原を疑ったんだろう。直後に栗原が同窓会の場を離れたのも問題だった。」
「栗原が逃げ出さなければ、疑われずに済んだのに、つくづく運がありませんね。」
 と、小川は苦笑を漏らした。
「まあ、彼としては、疑われないように必死だったんだろう。ただ、その栗原も、直後に何者かに襲われて気絶し、病院に運ばれたんだったな。」
「はい。それとほぼ同時刻に山口健太が殺害され、江戸川の方へ放り込まれました。翌11日の朝に発見され、私たちが捜査を担当することになった事件です。」
「少なくとも、山口の件に関しては、栗原に犯行は不可能だろう。しかし、一連の事件であることは間違いないことから、栗原犯人説はここで消していいだろう。」
 と、武井は言った。
「結果的に、栗原は証拠不十分で送検されずに13日に釈放されましたが、それを待っていたかのように近藤夫妻が誘拐されましたね。」
「厳密に言うと、いつ誘拐されたかまでは分からないだろう。正直言うと私は、彼らはもっと前に誘拐されたと思うね。」
「それはタイミングがあまりにも良かったからですか。」
「そういうことだ。誘拐というのは、特に大人を誘拐する場合、抵抗されて上手くはかどらないことが多い。そうすると、栗原釈放直後に身代金を要求するためには、予め誘拐しておいた、と考えるほうが普通だろう。」
「しかし、あくまで栗原の犯行に見せるためだけの計画でしたね。最終的には殺害しましたから、やはり殺す計画だったのでしょう。」
「ああ、そうだろうな。次に事件が起こったのは18日だ。失踪していて行方が掴めなかった中田俊が、奥多摩で殺害された。発見されたのも当日中だったな。発見者は誰なんだ。」
 と、武井は聞いた。
「実はよく分からないんです。電話で何者かが、奥多摩にある大谷邸を見てみるといい、面白いものが見れる、と警視庁の方に連絡を入れたそうなんです。」
「犯人かな。」
「そうだと思います。」
「すると、犯人は警察に挑戦状を叩きつけた訳だ。現場に行かせて、あと一人殺すことを公言し、それを警察が止められるかを見よう、ってことか。」
「畜生、完全に馬鹿にされてますね。」
 と、小川が息巻いて言った。
「ガワさん、落ち着いてくれ。それこそ犯人の思う壺だよ。」
「しかし、いいようにやられていると思うと、無性に腹が立ってきます。」
「まあ、私たちの力が足りないのも事実なんだから。とにかく、ここまで振り返って、どこが気になるかい。」
「そうですね。もちろん犯人でしょうが、誰が栗原を襲ったかが気になります。もしかしたら、栗原が顔を見ているかも知れません。」
「そうだな。よし、今すぐ、栗原の家へ向かおう。」

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あきゅろす。
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