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十五年越しの殺意(外村駒也)完
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 時計は既に午後1時を回っていた。武井と小川は、元西が予定の時刻より2時間遅れてもまだ現れないことに、危惧の表情を浮かべていた。
「……おかしいですね。元西に何かあったのでしょうか。」
「分からない。ただ、尋常ではないことは確かだ。普通なら、遅れると分かったときに連絡が来るものだと思うが、それが無いのだから異常事態でもあったのだろう。」
 二人がいる部屋の空気は非常に冷たく感じられるほどであった。二人の頭には、最悪の状況が浮かんでは消えていった。
「元西に連絡をもう一度取ってみよう。」
 二人は1時間前に、元西の携帯に、既に一度電話をかけてみたのだが、誰も出る様子が無かった。
「…………」
 やはり元西が電話に出る気配は無かった。
 しばらくして、午後2時になった頃であろうか、二人がいる部屋の電話がけたたましく鳴り響いた。
「武井警部ですか。こちらは津野です。元西さんが、先ほど東京多摩病院に運び込まれました。意識は無いそうです。」
 武井と小川は顔を見合わせた。
「一体どういうことなのか説明してくれないか。」
「それが、僕の友人が東京多摩病院に勤務しているのですが、その友人が僕に先ほど連絡をくれたんです。どうして僕に連絡したのかは分からないのですが。」
「病院に運ばれた理由は何だい。」
「よく分かりません。恐らく交通事故だと思われます。追突されたかもしれません。」
「そうか。今すぐそっちに向かおう。」
 武井と小川は、警視庁を慌しく出て、元西が運び込まれたという病院へと向かった。
「今川周平にやられたのかな。」
「恐らくそうでしょうね。元西が真相を知ってしまったが為に殺されかけたかも知れません。」
「すると、これは私の失態ということになる。元西君に捜査の協力をしてもらうのは危険だと、岡部君に言われたことが有ったにも関わらず、彼に調べて貰ったからな。」
 と、武井は頭を抱えて言った。
「しかし、流石にこうなることは予測出来ませんでしたから、今は元西君が意識を取り戻してくれることを祈るだけです。」

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