十五年越しの殺意(外村駒也)完 ページ:11 その夜、武井は再び部下を集めて会議を行った。 捜査があまりはかどっていないせいか、誰もが暗い表情をしていた。 「まずは何か新しく分かったことを聞かせて貰おう。」 「被害者の友人関係ですが、宮田中の同窓生の他には見つかっていない状況です。外部の友人に犯人がいた可能性は低いものと思われます。」 と、岡部が報告した。 「事件の共犯者の件ですが、可能性があるのは、恐らく清水遥、一人です。ただ、これは元西さんの話を聞く限りでは、ほぼ可能性は無いに等しいと思います。」 と、吉岡は言った。 「一体どういった動機があったのかね。」 「それが、強引な推測なのですが、彼女が松田のことを初恋の人だと言ったのが事実だとしたら、別の人と付き合っていた松田を逆に恨む可能性もあると考えました。また、近藤恭子には、ダンス部で散々いじめられたという話もありました。」 「後者の方は可能性がありそうだな。一応、清水をマークしておこう。」 「しかし、それでは松田の殺害とは結局結びつきませんよ。」 「分かっているが、刑事という仕事柄、疑うことを忘れてはいけない。吉岡君はこのまま引き続き共犯者を当たってくれ。岡部君は明日から、清水の動向を探るように。」 「了解しました。」 吉岡と岡部は声を揃えて言った。 「津野君は、新しく何かわかったかい。」 「特にあれ以降は、進展はありませんね。」 「それなら、明日から栗原の様子を見て貰えないだろうか。可能性は無いと思うんだが、もし栗原が犯人だった場合、みすみす逃してしまうことになる。それから、犯人が残した血文字の『あと一人』に当たるのが、栗原の可能性がある。その場合、栗原を殺されないように計らわなければいけないからな。」 と、武井は津野に命じた。 会議が終わった後、武井は上司の神田に呼び出された。 「実はさっき、神奈川県警の原口警部から電話が来てね。それで、だいぶ怒っていた様だったが、何の件だか分かるかい。」 「さあ、皆目見当が付きませんが。」 「元西君のことだよ。県警を辞めて私立探偵になった人間を、どうして公機関の警視庁が使っているのか、とね。」 「それで部長は何と答えたのですか。」 「今すぐ止めさせると伝えてしまったよ。まあ、県警側の要求だから仕方ないだろう。」 と、神田は言った。 「何て事をしてくれるんですか。彼個人で調査しているだけで、警視庁とは無関係だと伝えても問題なかった筈ですよ。」 「うむ、まあ、確かにそうなんだが、もう伝えてしまったからには元西君に調査を止めさせておくれ。」 「そういう訳にはいきません。今も彼に、重要な仕事をしてもらっている最中ですし、私立探偵だからこそ、自由に動き回れますから。」 「分かった。それなら、あと5日の間に事件を解決しなさい。それまでなら認めるが、5日を過ぎた場合は即刻、元西君に調査はさせない心算だ。最悪の場合、君たちにも手を引いて貰って、他の班に当たらせる。分かったな。」 「……はい。」 「下がってよろしい。」 武井は渋々引き下がることとなった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |