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十五年越しの殺意(外村駒也)完
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 N商事を出た武井たちは、近くの喫茶店へと入っていった。
「やはり、大谷もN商事の中央管理部勤務だったのか。」
「そうですね。だいぶいろいろなものが繋がって来ました。」
 と、小川が顔を輝かせて言った。
「恐らく、大谷がN商事を辞めた所までは本当でも、その先も、会社との繋がりは切れなかったのだろう。」
「N商事側から、退職をお願いしたかも知れないですね。何か裏取引に関わらせて、その口封じに退職して貰ったんじゃないでしょうか。」
「それで多額の口止め料を退職金として出したということか。可能性が高そうだな。元西君はどう思うかい。」
「その考えは間違ってないと思いますね。下手をすると、一連の殺人事件に渡嘉敷も絡んでいて、今回、大谷を消したのは渡嘉敷かも知れませんね。渡嘉敷と、今川が何らかの点で利害が一致したかも知れません。」
「だとすると、大谷の持っていた名簿の中に、今川の名前があるということも考えられるな。」
「そういうことになると思います。」
「逆に、渡嘉敷の側からはどんな利点があったと思うかい。」
「恐らく、何かの違法取引が露見しそうになったということじゃないですか。それで、大谷のもとから情報が漏れたと考えて殺害したとか。」
 と、元西が言った。
「何の取引ですかね。」
 と、小川が聞くと、
「もしかしたら、麻薬か何かの取引じゃないかと思っている。実を言うと、あの奥多摩の別荘から1キロと離れていない所で、2年前に大量の大麻が栽培されてるのが見つかったんだよ。あの付近はそれこそ人が立ち寄らなくて、人家が少ないから、可能性はあるんじゃないかな。」
 と、武井は言った。
「確かにそれでしたら、N商事が大谷を消したのも頷けますね。ところで、あの名簿のコピーを僕も一枚貰えませんか。いろいろと役に立つかも知れないので。」
「もちろん構わないよ。それじゃあ、あの中に今川と思しき人がいるか、元西君が調べてくれ。」
「了解です。」
 元西は名簿を受け取ると、車に飛び乗って去っていった。

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あきゅろす。
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