[携帯モード] [URL送信]

十五年越しの殺意(外村駒也)完
ページ:9
「今日はわざわざ時間を作ってくださってありがとうございます。」
「いえ、何も気にすることはありませんよ。警察の質問に答えるのも市民の務めですからね。」
 と、武井の挨拶に、渡嘉敷は答えて言った。傍から見ていた小川には、少し作り笑いの感じが出ていたようにも見えた。
「早速ですが、大谷さんが亡くなった件について聞きたいことがあります。」
「大谷、といいますと……」
「大谷清志さんです。こちらの中央管理部に勤務していたものとお聞きしたのですが。」
 と、武井は様子を探ってみた。大谷が、N商事勤務であったことは分かっていたのだが、どの部署に所属していたかまでは、調べがついていなかった。
「ああ、大谷君ですか。昨年はこちらに勤めて貰っていましたよ。ただ、前の6月に退職願を出されて辞められましたね。」
 と、渡嘉敷は言った。
「そうでしたか。実を言いますと、彼の自宅を捜査したところ、こちらの顧客名簿が発見されましてね。」
「N商事のですか。見せて頂けませんかね。」
「こちらです。」
 武井はそう言って、3枚有った内、栗原将史の名前がある名簿を渡嘉敷に渡した。
「その中にある栗原将史に見覚えはありませんかね。」
 と、武井が聞くと、渡嘉敷の目に一瞬だけ暗いものがよぎった様に見えた。
「……記憶にはありませんね。この名簿はもしかすると、株主の方々の名簿ではないでしょうか。それでしたら、可能性はあるかも知れません。」
「そういった情報も、中央管理部では取り扱っているんですね。」
 と、元西が確認するように言った。
「はい、そうなります。」
「すると、大谷さんはN商事を辞められたのに、その名簿を持っていたということになりますね。何故だか分かりますか。」
 と、小川が聞くと、
「本社との繋がりは切れていなかった、と言いたいのですか。」
 と、渡嘉敷は鋭い視線で言った。
「ええ。まあ、そういうことです。そこの所はどうなのでしょうか。」
「私の知っている範囲では、彼は既に無関係だったと思います。」
「そうですか。分かりました。他に疑問がありましたら、また後日伺います。ありがとうございました。」
 そう言って、3人は、N商事の本社を出ていった。

[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!