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十五年越しの殺意(外村駒也)完
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 翌日、武井と小川は、奥多摩の別荘の持ち主である、大谷さんという人を呼んで、事情を聞いた。
「あの別荘が勝手に使われていたということはご存知でしたか。」
「実は、あの別荘にはここ5年ほど全く行ってないのですよ。かなり不便な所にありますし、近頃は軽井沢の方に行くことが多くてね。」
「ということは、ここしばらくは、全く何も知らなかったということですね。」
「いえ、そういう訳でもないんです。2年ほど前からは、要望があれば一般の方に貸し出すということもあります。最近の一ヶ月ほどは無いのですが、2年間で5、6人の方が利用してくれましたよ。」
 と、大谷は言った。
「そうなんですか。利用された方のお名前は控えてあるのですか。」
「もちろんです。必要でしたら持ってきましょうか。」
「はい、お願いします。ところで、大谷さんは中田俊という人をご存知ですか。」
「え。どなたですって。」
「いえ、知らないのなら構いません。それでは、別荘の件、お願いします。」
 大谷さんには、明後日に再び来てもらうことにし、武井と小川は、元西と会うことにした。
「どうですか、警部の方は。だいぶいろんな人が殺されているみたいですが。」
「そうなんだよ。困ったことに、こっちが問題を解決する前に新しい問題が次々に持ち上がってくる。全くはかどってはいないよ。」
「大変そうですね。ただ、警部。今回中田が殺されたのは、警察側にとって誤算でしたが、犯人にとっても誤算だった筈です。栗原犯人説が消えた今、中田を犯人に仕立て上げたかったと思います。ですから、意外と事件を紐解く鍵になるかも知れませんよ。」
「ああ。ところで、元西君の方はどうだい。消えた今川周平の行方は分かったかい。」
「やはり、消えてから十数年経って探すのは大変ですね。恐らく、今生きているとしても、全く異なった偽名を用いていると思います。」
「確かにそうだろうな。今どこにいるといった目星はつかないのか。」
 と、武井は聞いてみた。
「難しいですが、僕の勘だと、横浜か東京にはいると思います。」
「なぜだい。」
「そうですね。今川は多分、栗原を犯人に仕立て上げようとしていたんだと思います。すると、栗原の身近にいる人間が最も可能性が高いのではないかと考えたんです。」
「なるほど。栗原の周りは考えなかったな。被害者の共通項が、宮田中の同窓生だという点ばかりに気を取られていた。」
「いえ。それはそれで間違いないと思います。栗原も一応、宮田中の卒業生ですからね。ただ、今川が同窓生に紛れ込むことは出来なかったと思います。だから、松田が殺された状況からすると、内側に共犯者がいると考えられそうです。」
 と、元西は言った。
「分かった。それなら元西君は引き続き今川の行方を追ってくれ。私たちは、栗原の同窓生の中で、共犯者を探してみよう。」
「よろしくお願いします。」
「くれぐれも、無茶だけはするなよ。」
 と、武井は元西に注意を促した。

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あきゅろす。
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