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十五年越しの殺意(外村駒也)完
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 警視庁に戻った武井は、能登島と奥多摩の両事件現場の写真を見比べていた。
 二つの現場は、面白いほど酷似していることが分かった。
 まず、殺害された被害者の状況。どちらも無惨に殺されている。明らかに強い殺意や憎しみがあり、死んだ後も痛め続けたことが見て取れる。
 次に、事件の場所。どちらも人が寄り付かないような山奥にある。ただし、誰かしら他の人の所有している所である。今回の奥多摩の一件も、東京都在住の大谷さんという人の別荘であった。
 武井はこれらの事例をホワイトボードに書きつけていった。
 その時、武井の携帯が鳴った。石川に残してきた吉岡からの電話だった。
「実は、新しいことが一つ分かりました。」
 吉岡はだいぶ興奮している様子だった。
「一体何が分かったんだい。」
「近藤夫妻が発見された部屋のルミノール反応を見てみたんです。焼けているので自信はなかったのですが、上手くいきました。確か、奥多摩の方で、あと一人といったような血文字があったそうですね。」
「ああ、そうだよ。そっちにもあったのかい。」
「はい。『復讐まで あと二人』といった血文字が発見されました。これで、二つの事件の関連性は否定できないと思います。」
「分かった、ありがとう。もし、もうこれ以上調べても、どうしようもなさそうだったら、引き揚げてきなさい。」
 武井はそう言って電話を切った。
 ホワイトボードに、新たに一つ書き足された。
 犯人の自己顕示欲と自信。どちらの現場にも血文字で次の事件を示唆することが書かれていた。
 そこまで書いたところで、武井は福田課長に呼び出された。
「また、神田刑事部長がお怒りだったよ。君が県警の方針に逆らっていると言ってね。」
 福田も、半ば神田部長に呆れている様でもあった。
「すみません。ただ、関連性はほぼ確実ですので、その点で譲歩する心算はありません。」
 と、武井は言い張った。
「分かっているよ。君が言うんだから間違いはないのだろう。だが、あまり反対しすぎると、部長が捜査の中止を命じるかも知れないから、あまり表面的に県警と対立はしないでくれ。私が部長を説得できるのにも限度があるからね。」
「いつも迷惑ばかりかけて申し訳ありません。」
「いいんだよ。事件を解決してくれれば構わないさ。」
 と、福田は言った。

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あきゅろす。
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