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十五年越しの殺意(外村駒也)完
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 二人が奥多摩に着く頃には、既に日は沈み、辺りは真っ暗になっていた。
 現場検証が済んでいない為、現場は発見当初のままで残されていることを知り、二人は翌日19日に、現場へ向かうことにした。
 現場の惨状は、近藤夫妻が殺されていた能登島のそれに、決して引けをとるものではなかった。部屋中が赤く血で染まり、脳漿が飛び散っているのがはっきりと目に映った。強いて言うならば、能登島の現場は焼けていたのに対し、今回は焼けていない為、かえって酷く感じられたかもしれない。
 中でも、特に武井たちの目を引いたのは、小屋の壁に描かれた、
  復讐まで あと一人
という血文字であった。
「これを見てどう思うかい、ガワさん。」
「そうですね、初めて犯人の性格面に触れたような気がします。」
「私もそう思ったよ。ガワさんなら犯人の性格をどう捉えるのかな。」
「なんとなく自己顕示欲が強いような気がします。少なくともこの血文字は、警察に対する挑戦だと思うんですよ。すると、そういった自分の力を誇示したがっていると考えられないでしょうか。」
「いや、その通りだと思うよ。それからもう一つ。恐らく、この犯人は自信家だろうね。もう一人殺すことを警察に公言しても、それを止められることはないという自信があると思う。」
「それはやはり、15年前の事件を警察が解決できなかったことへの怒りも含まれているんでしょうか。」
「多分そうだと思うね。」
「しかし、あと一人というのは、今までの犠牲者を合わせると、復讐の対象は、初めから6人いたことになりますね。どうも、清水の証言と異なってくるような気がします。」
「そもそも、今回の事件が、一連のものではないと考えているのですが。」
 いきなり誰かが、話に入り込んできた。
 武井が後ろを向くと、そこには県警の原口が立っていた。
「こんにちは。警視庁捜査一課の武井です。今回の件では、ご協力ありがとうございます。」
「いえ、こちらこそ。ただですね、私たちとしては、あまり警視庁の方に介入されたくないのですよ。捜査協力まではして頂くことをお願いしましたが、あくまで方針は神奈川県警のほうに従って貰いたいものです。」
 と、原口は言った。
「確かに、15年前の宮田中の卒業生が揃って殺害されてはいるが、全く異なるものだと考えている。特に、近藤夫妻の事件と今回は、全く別物という認識です。」
「そうですか、県警側がそう考えているのは非常に残念です。しかし、警視庁側はあくまで同一犯による事件だと考えていますので、よろしくお願いします。」
 原口は、武井のこの発言を聞いて、心外に思ったらしい。顔をしかめて向こうの方に行ってしまった。
「参ったな。この調子だと、今日の夜にも神田部長に呼び出されてお説教かも知れないな。」
「事件に対する方針が異なるのは仕方のないことですよ、警部。」
「分かっているさ。ただ問題は、神田部長が私たちの捜査に介入するかも知れないということさ。」
 武井と小川は、現場の写真を取り終えると、警視庁の方に戻って行った。

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