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十五年越しの殺意(外村駒也)完
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 七尾署から、能登島にある現場までは20分程度だった。
 既に近藤夫妻の死体は運び出されてはいるのだが、それでも惨状を伝えるには十分だった。廃校舎は内側が半分ほど焼けた状態で発見されたために、血痕などは目立たなくなっているが、所々赤黒い染みが目に付いた。また、明らかに飛び散った肉片と思しきものが至る所にこびりついていた。回収し切れないほどに散らばっていたということだろうか。発見当初の状況を見ていないので、武井にとっては何とも言いがたかった。
 しばらくして、吉岡と岡部が現場の方に戻って来た。
「警部。もういらしていたんですか。午後4時ぐらいにはなるだろうと思っていました。」
「まあ、朝一番の列車に乗って来たからな。」
「そうですか。それほど急いで下さらなくても問題はありませんでしたのに。」
「ところで、今までどこにいたんだい。ここの現場にいると聞いて、大倉警部補に送って貰ったんだが。」
「あの大倉さんに送って貰ったんですか。あの人だったら誰か他の人に送らせると思ったんですが。」
「やはり、君たちからすれば、無愛想な人なのか。」
「当然ですよ。なんか自分勝手で固い人ですよ。」
 と、岡部が口を尖らせて言った。
「そうか。やはり神田部長みたいな人らしい。私に対しては、おかしいほど丁寧だったよ。」
「そうでしたか。それなら将来、石川県警の刑事たちは大変でしょうね。」
「で、どこにいたんだ。」
「あ、はい。一応ここが焼けているので、誰か目撃者がいないか聞き込みをしていたところです。ただ、どうにも夜中だったのと、14日の明け方にかけて降った雨ですぐ消し止められた為か、一人も目撃者がいませんでした。」
 と、吉岡が残念そうに言った。
「ところで、殺害された近藤夫妻の遺体は、どこに運び込まれたんだい。」
「確か、金沢医科大学病院だったと思います。今日か、明日中にも、近藤悠太の弟さんが引き取りに来ると思います。」
「そうか。なら、今から医科大病院に向かおう。少し知りたいことがあるのでね。」
 と、武井は言った。

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あきゅろす。
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