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十五年越しの殺意(外村駒也)完
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 武井と小川は、越後湯沢を7時20分に発車する、北陸本線の特急はくたか2号の車内にいた。吉岡から電話をもらった翌日、3月18日の最も早い列車である。
 缶コーヒーを買いに席を立っていた小川が、武井のところに戻って来た。
「いやあ、大変な事になりましたね。まさかこんな事になっていたとは、思いもよりませんでした。」
 小川が、コーヒーを武井に手渡しながら言った。
「ああ。私もまだ、近藤夫妻が生きているだろうとふんでいたんだが。少し考え方が甘かったかな。」
 と、武井は少し反省したような顔つきで言った。
「いえ、そんな事はありませんよ。私だって、近藤夫妻は殺されてないと願っていましたから。確かに、身代金を渡してから、あまりにも間隔が空いていましたからね。」
「どうも犯人たちは、身代金が手元に届く前に殺したみたいだ。初めから殺す心算だったんだろう。」
「ええ。それも警察に挑戦的な殺し方で、ですね。こうなってくると、犯人グループが国外へ出てしまった公算も強くなってしまいますね。」
 小川が残念そうに言った。
「いや、そんな事はないだろう。向こうはまだ、顔を知られてないし、私たちも犯人の特定まで結びついてないからね。」
 と、武井は落ち着いて言った。
「県警側からは、誰が来るんですかね。」
「おそらく原口警部と、杉山刑事が来るだろうね。ただ、向こうからすると、いい加減栗原犯人説を捨てざるを得ないだろうから、有り難くないだろうがね。」
「そう言えば、失踪して、ただいま行方不明の中田は、どうしているんですかね。なかなか捜査が進んでいる様子には見えないのですが。彼が犯人という事はないのですか。」
「いや、実を言うと、私もそれは気になっていてね。ただ、県警側が、中田の失踪と今回の一連の事件を無関係なものだと割り切っていてね。まあ、未だに栗原犯人説をとっているのだから仕方はないがね。それで、神田部長のことだから、県警に口出しするなと言って、捜査させて貰えないんだよ。元西君の話だと、向こうの捜査も全く進んでないらしいけど。」
 と、武井は言った。
「そうですか。これではまるで八方塞ですね。」
「ああ。中田の行方さえ分かれば、だいぶ事件は解決に向かうと思うんだがなあ。」

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