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十五年越しの殺意(外村駒也)完
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 大倉警部補も、現場に着いたとたんに顔が真っ青になった。この世のものとは思えないほどにずたずたにされた死体を見て、彼も吐き気を覚えたらしい。
 一応死体は、司法解剖とDNA鑑定に回された。損傷が激しいので、しばらく時間がかかりそうではあったが、意外とすんなり結果が返ってきた。
「DNA鑑定の結果、被害者は近藤悠太と近藤恭子の夫妻と断定しました。死因は、近藤悠太は大量出血、恭子は窒息死といった結果です。」
「……死亡時刻はいつでしたか。」
 吉岡は、絶望に打ちひしがれながらも、声を絞り出して聞いた。
「そうですね。焼けてしまっているので判定にぶれはあるのですが、おそらく3月13日の午後7時頃でしょう。」
 吉岡は、武井に報告するため電話を掛けた。
「もしもし、武井警部ですか。」
「吉岡君か。どうだね、そちらの状況は。」
「……和倉温泉の向かいにある能登島で、近藤夫妻が殺害されているのが発見されました。」
 一瞬、電話の向こうで沈黙があった。
「そうか。なんとなくそんな気がしてはいたが……。いつ殺されたのかね。」
「13日の午後7時頃だそうです。」
「つまり、身代金を受け取ってすぐ殺したというのか。何の為に身代金を払ったのか、まるで分からないな。みすみす1億円を奪われたことになる。」
 と、電話の向こうで、武井が悔しそうに言った。
「はい。おそらく、初めから殺す心算だったのでしょう。」
「分かった。明日、私もそちらへ向かおう。それまで待っていなさい。」
 そう言って武井は電話を切った。

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