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十五年越しの殺意(外村駒也)完
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「N商事の頃の松田について、何か分かったことはあったか。」
 最初に原口はそう言った。
「中央管理部の渡嘉敷部長に会ってきました。松田は、仕事上、何かしら後ろめたいことはあったみたいです。しかし、それは会社内部のことで、今回の事件に関係は無いと睨んでいます。」
「それは君の見解だろう。」
「そうですが、僕が見たところ、下手なことを言って、会社内に犯人がいると思われるのを嫌ったのではないかと思います。実際にいなくとも、捜査をされれば会社のイメージダウンになりかねませんから。」
 と、元西は説明した。
「社内に犯人がいたかどうかではない。松田が、何か栗原と取引をしていたかどうかだ。何度も言っているだろう。」
「しかし、警部。N商事とは無関係ですが、松田が通っていた高校で、15年前に事件があったことを掴みました。一人の女子が殺害され、松田が容疑者だったみたいです。事件は結局解決せず、この5月に時効を迎えます。これが元で、松田が殺されたのではないでしょうか。」
 しかし、どうやらこの話を聞いて、原口はますます不機嫌になったみたいだ。
「それが一体どうかしたのかね。松田は結局犯人じゃなかったのだろう。全く関係ないじゃないか。無罪が確定した男を殺しても、自分が犯罪者になるだけではないか。その件の被害者より、栗原の方が犯人の可能性のほうが高い。とにかく、私に指示されていないのに、勝手な行動を取るな。いいか。次にこのようなことがあったら、それなりの覚悟をしておけ。」
「警部、残念ながら、その命令には従えません。」
 元西は不意にそう言った。
「馬鹿なことを言うな。命令は命令だ。素直に従えば間違いはない。私はこの道30年のベテランだ。まだ10年も経っていない若造のくせに、エリートだからといって調子に乗るんじゃない。」
 と、原口は怒鳴りつけた。かなり頭に来ているらしい。自分の捜査方針であまり上手く行っていないので、ストレスも溜まっていたのだろう。その捌け口を見つけたかのように捲くし立てていた。
「警部、そこまで言うなら、僕は刑事を辞めます。」
 元西はそう言って、懐に持っていた辞職願を、原口の前に叩きつけた。
「何、辞めるだと。ふん。勝手にするがいい。辞めたい奴は辞めてしまえ。その代わり、二度とここに顔を出してはならん。」
「ええ、結構ですよ。」
 元西は、自分の警察手帳と、拳銃を机の上においた。そして、そのまま一言も言わずに出て行ってしまった。

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あきゅろす。
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