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十五年越しの殺意(外村駒也)完
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「……待って下さい。元西さんでしたね。本当に、15年前の出来事が分かれば、犯人逮捕につながるんですね。」
 と、清水は元西を呼び止めて、言った。
「はい。必ずつながります。」
「この話を聞いて、松田さんの事を、殺されて当然だったとか、思わないと誓えますか。」
「当然です。」
「……分かりました。私が知っている範囲でお教えします。」
 最終的に、清水が折れた。ついさっきまでの彼女とは打って変わって、だいぶ弱っているようだった。目にはうっすらと涙を浮かべているようにも見えた。
「あれは、高校生活が始まってから、1ヶ月ぐらいの頃でした。クラスに、一人、今川愛奈っていう娘がいたんです。同じ学年では並ぶものはいないぐらいに可愛い娘だったんですけど、松田さんが、その娘のことが好きになったんです。まあ、よくあることですよね。それで、松田さんが告白したんですけど、あっさりと断られてしまって。本人はだいぶショックで、それだけなら良いんですけど、1週間ぐらいしてその今川さんがほかの男子と手をつないで帰っているのを見て、頭に来たらしいんです。何しろ、高校では誰とも付き合わないと言って断られたらしいのでね。それから2、3日して今川さんが亡くなったんです。高校の裏の雑木林で見つかって、暴行された挙句絞殺されていました。警察の方が調べたところ、体内に残っていた精子から、犯人の血液型はB型と断定されて、松田さんがB型なものですから、学校中が、松田さんが犯人じゃないかといった感じになって……。本人は決して殺ってないと言っていましたが、誰も信じるはずが無かったんです。彼には、死亡時刻のアリバイも無かったし、死体の近くには、彼の物らしいボールペンも落ちていました。いつも松田さんはボールペンを胸ポケットに入れていましたが、その日から、入れなくなったのも疑われた要因でしょう。そして何よりも、状況証拠が、彼が犯人だと物語っていたんです。一応、証拠不十分で彼は逮捕されなかったんですが、結局、6月に入って松田さんは日比谷高校に転校してしまいました……。」
 気まずい沈黙が流れた。こんな過去があろうとは、元西も杉山も全く考えていなかった。確かに、高校側が隠そうとしたことも頷ける。完全な汚点となり得るからだ。元西は、清水が全てを話してくれたことに感謝をしながらも、驚いていた。情が入ってしまって、聞くべきではなかったかとも思っていた。
「どうもありがとうございます。ごめんなさい、言いたくなかっただろう事を、無理やり聞き出してしまって。」
「必ず、犯人逮捕に役立ててください。」
 と、清水は言った。
「……もう一つだけ聞かせて下さい。松田は、清水さんにとって大切な方だったんですか。」
 清水は、頬を真っ赤にしながら言った。
「……彼は、私の初恋の人でした。」

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あきゅろす。
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