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十五年越しの殺意(外村駒也)完
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 その頃、元西と杉山は、松田の中学高校時代の同級生の、清水遥の元へ伺っていた。
「松田さんのことについてですね。」
 清水は、自分の元に聞きに来ることを、初めから知っていたようだった。
「ええ、そうですが、なぜ知っていらっしゃるんですか。」
「事件がまだ解決していないのですから、当然のことでしょう。」
 と、清水は不敵な笑みを浮かべながら言った。
 まるで、すべてを見透かしたかのような清水に、元西は恐怖さえおぼえた。
「それは確かにそうですね。ただ、僕らが知りたいのは、15年前のことなのですよ。15年前に、緑ヶ丘高校で何があったか知りたいのです。」
 清水は顔色一つ変えなかった。それは逆に、何かがあったことを物語ってもいた。
「15年前ですか。特に何かがあったという記憶は無いのですが。」
「そんなことは無いはずです。必ず何かがあった。だからこちらへ伺ったんですよ。」
「それなら高校側へ行けば良いじゃないですか。」
「行きましたが、何も教えていただけませんでした。」
「高校が何もないと言うなら、何も無いですよ。」
「しかし……」
 元西はなおも食い下がった。
「お願いです。もし何かが本当にあったのなら、教えてください。それが今回の事件を解決する鍵になるんです。」
 元西は、恥も外聞も捨てて懇願していた。隣にいた杉山が最も驚いていた。元西は比較的プライドが高いほうだった。東大出のエリートで、そろそろ警部補に昇格するのではと、県警内では言われていた。その元西が、土下座をしそうな勢いで懇願しているのである。杉山は、元西が本当に刑事を辞めるつもりかも知れないと思った。
 清水の方も、少なからず動揺しているようだった。
「……ですから、何もなかったですよ。」
「本当に、何かあったはずでしょう。」
「何もありませんでした……。」
 清水も最後のほうは尻すぼみになっていた。
「……そうですか。本当に何も無かったのなら、これで失礼します。だいぶお騒がせしました。」
 元西はそう言って、帰ろうとした。

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あきゅろす。
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