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十五年越しの殺意(外村駒也)完
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 ここは、石川県の和倉温泉である。吉岡と岡部の両刑事は、武井警部の命令で現地での聞き込みを頼まれていた。
 二人はまず、石川県警の方へ挨拶に向かった。JR七尾線の和倉温泉駅の一つ前、七尾駅の近くにある七尾署に、小さいながら捜査本部が設置されていた。そもそも、行方不明になった車の捜索のために設置された捜査本部だ。小さいのは当然の事である。
 七尾署に向かうと、石川県警の大倉警部補は既に来ていた。吉岡は、大倉の顔を見た時に、上司の武井警部とは正反対の、非常に頑固な性格だろうと直感した。
「初めまして、警視庁捜査一課の吉岡と岡部です。」
「ああ、初めまして。私が、大倉だ。君たちの事は、警視庁の武井警部から聞いているよ。」
「はい。それで、例の二台の車が発見された当時の状況を教えていただけませんか。」
「分かったよ、ついてきな。」
 やはり、だいぶ頑固で、自己中心的な人だな、と吉岡は思った。
 大倉は、二人をつれて、シルバーのライトバンが発見された現場へと向かった。しばらくの間、JR七尾線に沿っている県道1号線を通っていると、和倉温泉駅が見えて来た。和倉温泉駅から先は、JR線は出ていない。そのかわり、能登七尾線が出ている。吉岡らを乗せた車は右折し、温泉街へと向かって行った。しかし、その温泉街へは向かわず、細い路地へ入っていった。
「だいたいここら辺だ。」
 大倉警部補が、突然言った。
「ここは、和倉公園だ。この脇に二台そろって止まっていた。」
「しばらく聞き込み等をしたいのですが。」
 岡部がお願いすると、
「ああ、いいよ。私は先に戻っているがね。」
 と、大倉は言って、先に七尾署へ戻ってしまった。
「だいぶ固い人ですね。」
「はい。まあ、会った時にすぐそう思いましたから。」
 と、吉岡はうなずいた。
「とにかく、聞き込みを始めましょう。」

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